「アンケートでは、いつも表面的な回答しか得られない…」

「顧客が、なぜ自社の商品を買ってくれないのか、本当の理由が分からない…」

「ユーザーの潜在的なニーズを知るには、どうすればいいんだろう?」

このような課題に直面しているWeb担当者の方やマーケティング担当者の方は多いのではないでしょうか。
定量調査であるアンケートやアクセス解析は、顧客の全体像を把握する上で非常に有効ですが、その回答の背後にある「なぜ?」「どうして?」といった深い動機や感情を捉えることは困難です。

そこで重要になるのが、定性調査です。

この記事では、顧客の「本音」と「深層心理」を深く掘り下げるための定性調査について、その種類から具体的な実施方法、そして成果を出すための重要なポイントまで、網羅的に解説します。この記事を読めば、あなたのビジネスに新たな示唆をもたらすインサイトの発見に繋がるはずです。


定性調査の基礎知識

定性調査は、対象者の行動や発言の背景にある思考、感情、動機といった質的な情報を深く掘り下げるリサーチ手法です。数字で表せない情報を得るために、非常に重要な役割を果たします。

1. 定性調査の目的

定性調査の主な目的は、顧客インサイトの発見です。顧客自身も気づいていないような潜在的なニーズや、製品・サービスに対する本当の評価、購買行動の裏にある感情などを明らかにすることで、仮説構築や新たなビジネスチャンスの発見に繋がります。

2. 定量調査との違い

  • 定量調査: アンケートやアクセス解析のように、「量」を把握する調査です。「何人が」「どのくらい」という客観的な事実を知るのに適しています。
  • 定性調査: インタビューや行動観察のように、「質」を深掘りする調査です。「なぜ」「どのように」という背景や動機を知るのに適しています。

両者は対立するものではなく、補完し合う関係にあります。まず定量調査で全体像を把握し、そこから見えた課題や仮説を定性調査で深く掘り下げることが、最も効果的なリサーチの進め方です。

主な定性調査の種類

定性調査にはいくつかの種類があり、それぞれ目的や状況に応じて使い分けます。

1. デプスインタビュー(深層心理を探る)

  • 概要: 調査員と対象者が1対1で行うインタビューです。
  • 目的: 非常に個人的で繊細なテーマ(例えば、コンプレックスに関する商品、健康・美容に関する悩みなど)について、深く掘り下げて本音を引き出すことに適しています。
  • メリット:
    • 他者の意見に左右されず、対象者個人の深い考えや感情を引き出せる。
    • 調査員が柔軟に質問を変えたり、深掘りしたりできる。
  • デメリット:
    • 1回の調査に時間とコストがかかる。
    • 調査員(インタビュアー)のスキルが結果に大きく影響する。

2. グループインタビュー(多様な意見を探る)

  • 概要: 複数の対象者(通常4~8人)が一つのテーマについて話し合う場に、司会者(モデレーター)が加わり、議論を促すインタビューです。
  • 目的: 特定のテーマに対する多様な意見や、参加者同士の相互作用から生まれる新たな発想を得ることに適しています。
  • メリット:
    • 一度に複数の意見を聞くことができ、効率が良い。
    • 他者の発言に触発されて、自分の考えがより明確になったり、新たな意見が生まれたりする。
  • デメリット:
    • 議論が活発になりすぎたり、特定の参加者が発言を独占したりするリスクがある。
    • 個人的なテーマには不向き。

調査設計と事前準備のコツ

定性調査の成功は、事前の周到な準備にかかっています。

1. 調査目的を明確にする

「なぜこの調査を行うのか?」という目的を明確にすることが最も重要です。「〇〇という仮説を検証するために、△△という顧客の深いインサイトを掘り下げる」のように、具体的に設定しましょう。

2. 適切な対象者を選定する

調査目的に応じて、適切なセグメントの対象者を選びます。例えば、特定の製品のヘビーユーザーや、競合製品のユーザーなど、仮説検証に役立つ情報を持っている人に協力してもらいましょう。

3. インタビュー設計を行う

インタビューの台本(スクリプト)を作成します。

  • 導入: 調査の目的を伝え、対象者が安心して話せる雰囲気を作ります。
  • 本題: 仮説を検証するための質問を、「なぜ?」を繰り返すように深掘りできるよう設計します。
  • まとめ: 最後に、重要なポイントを再確認し、感謝を伝えて終了します。
太田高寛

当社のノウハウでは、社内のだれでもハイクオリティのインタビューができる設計ノウハウを持っています。インタビューは専門家だけのものではありません。テンプレートやチェックリストを事前に用意することで、誰でも顧客の本音を深く引き出せるようになります。

インタビュー実施のポイント

実際にインタビューを行う際の重要なポイントをご紹介します。

1. 聴く姿勢に徹する

調査員は「話す人」ではなく、「聴く人」に徹することが大切です。対象者の言葉を遮らず、まずは最後まで耳を傾けましょう。頷いたり、相槌を打ったりすることで、相手は安心して話してくれます。

2. 「なぜ?」を繰り返し深掘りする

「〇〇だとおっしゃいましたが、なぜそう思われたのですか?」
「そのとき、どういった気持ちでしたか?」
具体的にどのような場面でそう感じましたか?」
このように、「なぜ」「どうして」「具体的に」という質問を繰り返すことで、表面的な回答の奥にある本音を引き出すことができます。

3. 観察力を働かせる

言葉だけでなく、表情や声のトーン、ジェスチャーなどにも注意を払いましょう。言葉と行動に矛盾がないか、あるいは話しているうちに感情が変化していないかなど、非言語情報から多くのヒントを得られることがあります。

定性調査の分析と活用法

収集したデータは、分析して初めて価値を持ちます。

1. 発言の可視化

インタビューの録音や動画を文字に起こし(トランスクリプト)、発言内容を可視化します。これにより、後から何度も見返したり、チーム内で共有したりすることができます。

2. 分析フレームワークの活用

文字起こししたデータから、重要なキーワードやテーマを抽出し、以下のような分析フレームワークで整理します。

  • KJ法: 付箋などにキーワードを書き出し、関連性のあるものをグループ化して図にまとめることで、新たな構造やパターンを発見します。
  • カスタマージャーニーマップ: 顧客がサービスや製品と出会ってから利用するまでのプロセスを時系列で図示し、それぞれのフェーズで顧客が何を考え、どう感じているかを可視化します。
太田高寛

収集したデータは、そのままでは宝の持ち腐れです。当社の分析ノウハウでは、集めたデータを「次につながる価値ある情報」に変換するサポートをしています。これにより、単なる「調査」で終わらせず、具体的な改善策や新戦略に繋げることができます。

まとめ:定性調査で顧客の心をつかむ

定性調査は、顧客の表面的な情報だけでなく、その奥にある「本音」と「深層心理」を明らかにするための強力な武器です。

  • 目的の明確化: 何を知りたいのかを具体的に設定しましょう。
  • 定性・定量調査の連携: アンケートで全体像を把握し、インタビューで深掘りする流れが効果的です。
  • インタビュースキル: 聴く姿勢に徹し、「なぜ?」を繰り返すことが重要です。
  • 効率的な分析: 集めたデータを整理・分析し、具体的なアクションにつなげましょう。

よくある質問(FAQ)

インタビューはオンラインとオフライン、どちらが良いですか?

どちらにもメリット・デメリットがあります。オンラインは、地理的な制約がなく、多くの対象者と手軽に接続できるのが大きなメリットです。一方、オフラインは、対面で相手の表情や雰囲気をより詳細に把握でき、より深い信頼関係を築きやすいというメリットがあります。目的や予算、対象者の属性に応じて使い分けましょう。

インタビューの対象者はどうやって見つければいいですか?

インタビュー対象者のリクルーティングは、専門のリサーチ会社に依頼する方法と、自社で実施する方法があります。自社で実施する場合は、SNSでの呼びかけ、自社サイトの顧客データベース、既存顧客へのメールなどで募集をかけます。目的とするセグメント(例:特定の職種、年代、特定の商品の利用者など)に絞って声をかけることが重要です。

インタビュー結果はどのように社内で共有すべきですか?

インタビュー結果を社内で共有する際は、単に文字起こしを共有するだけでなく、顧客の生の声(動画や音声)もセットで共有することが非常に有効です。また、インタビューで得られたインサイトをストーリーとしてまとめ、具体的なアクションプランと共にプレゼンすることで、チームや経営層の理解を深めることができます。当社のノウハウでは、この分析と共有を効率的に行うためのフレームワークも提供しています。