「マーケティング職って、実際どのくらい稼げるの?」 「将来、年収1,000万円を目指すには、どんなキャリアを歩めばいいんだろう?」

マーケティング職への転職やキャリアチェンジを考えるとき、仕事のやりがいや面白さと同等に、「年収」は非常に重要な関心事ですよね。企業の売上を左右する重要な役割を担うマーケティング職は、専門性が高く、成果次第で高年収が期待できる魅力的な職種です。

しかし、その年収は業界、企業規模、そして何より本人の「スキルセット」によって大きく左右されるのが実情です。特にデジタル化が急速に進む現代において、「どの分野の専門性を、どのレベルまで高めるか」という戦略的なキャリア設計が、年収アップの鍵を握ります。

TSRコン-サルティングは、企業のマーケティング戦略支援を通じて、どのようなスキルを持つ人材が市場で高く評価され、高年収を実現しているかを熟知しています。

本記事では、最新の転職市場のデータに基づき、マーケティング職のリアルな年収相場を徹底分析するとともに、未経験からでも年収を飛躍的に上げるための具体的なキャリアパスと戦略を網羅的に解説します。この記事を最後まで読めば、あなたは自身のキャリアの現在地と目指すべきゴールを明確にし、年収アップという目標から逆算した、戦略的なスキル習得計画を立てることができるでしょう。


マーケティング職の年収相場

マーケティング職の年収は、日本の平均年収と比較して高い傾向にありますが、その内訳は役職、経験、業界によって大きく異なります。まずは、客観的なデータからマーケティング職の年収の全体像を掴みましょう。

全体的な平均年収

各種転職サイトや国税庁のデータを総合すると、マーケティング職全体の平均年収は約600万円前後とされています。日本の給与所得者全体の平均年収が458万円(令和4年分 民間給与実態統計調査)であることを考えると、専門職として高く評価されていることがわかります。

ただし、これはあくまで平均値です。未経験からスタートする場合は350万円〜450万円が相場となり、経験を積んだシニアマーケターや管理職クラスになると800万円〜1,200万円、さらにCMO(最高マーケティング責任者)クラスになると1,500万円以上を目指すことも可能です。

役職・ポジション別年収相場

マーケティング組織内の役職によって、年収レンジは大きく変わります。

役職/ポジション年収相場(目安)主な役割と責任
メンバー/担当者400万円 〜 650万円SEO、広告運用、SNS担当など、特定の施策の実行を担当。
リーダー/主任600万円 〜 800万円複数メンバーをまとめ、特定のプロジェクトやチャネルの責任者。
マネージャー/課長700万円 〜 1,200万円マーケティング部門全体の戦略立案、予算管理、メンバーの育成。
部長/CMO候補1,000万円 〜 1,500万円以上経営視点でのマーケティング戦略の策定、事業全体の成果責任。

業界・企業規模による年収の違い

年収は、所属する業界や企業の規模によっても大きく変動します。

  • 高年収が期待できる業界:
    1. 外資系IT企業(GAFAMなど): 世界的なプラットフォーマーは、マーケターに対しても非常に高い報酬水準を提示します。
    2. SaaS業界: サブスクリプションモデルのビジネスは、マーケティングによる顧客獲得とLTV(顧客生涯価値)の向上が事業の核となるため、専門性の高いマーケターは高く評価されます。
    3. コンサルティングファーム: 戦略コンサルタントとして、クライアントのマーケティング課題を解決する役割を担い、高い専門性が求められるため年収も高くなります。
  • 企業規模:
    • 大手企業: 平均年収は高い傾向にありますが、年功序列の要素が残っている場合もあります。
    • スタートアップ/ベンチャー: 平均年収は大手より低い場合もありますが、ストックオプションの付与や、事業の成長にダイレクトに貢献できるやりがいがあります。成果次第で、短期間で大幅な年収アップも可能です。

年収を上げるキャリアパス

マーケティング職で年収を上げるためには、「専門性を深める」か「マネジメントへ進む」かという、大きく分けて2つのキャリアパスが存在します。自身の志向性と強みに合わせて、戦略的にキャリアを選択することが重要です。

専門性を極める「スペシャリスト」

特定のマーケティング領域で、誰にも負けない専門知識とスキルを磨き、「〇〇のプロフェッショナル」としての地位を確立するキャリアパスです。

  • キャリアの方向性:
    • SEOスペシャリスト: 検索エンジンのアルゴリズムを深く理解し、企業のオウンドメディアをオーガニック検索で上位表示させる専門家。
    • 広告運用スペシャリスト: Google広告やSNS広告の運用を極め、CPA(顧客獲得単価)やROAS(広告費用対効果)を最大化する専門家。
    • データサイエンティスト/アナリスト: GA4やBIツールを駆使し、膨大なデータからインサイトを抽出し、戦略的な意思決定を支援する専門家。
  • 年収アップの鍵:
    • 常に最新の知識をアップデートし続けること。
    • 再現性のある成功法則を確立し、個人として高い成果を出し続けること。
    • フリーランスとして独立したり、専門性を活かしてより条件の良い企業へ転職したりすることで、年収1,000万円以上を目指すことも可能です。

組織を動かす「マネジメント」

メンバーを率いてチームとして成果を最大化し、将来的には経営層として事業全体を動かすキャリアパスです。

  • キャリアの方向性:
    • マーケティングマネージャー: チーム全体の戦略立案、予算管理、メンバーの育成、他部署との連携など、マーケティング活動全般を統括する。
    • 事業責任者/プロダクトマネージャー: 特定の事業やプロダクトのP/L(損益計算書)に責任を持ち、マーケティングだけでなく、開発や営業など全ての部門を統括する。
    • CMO(最高マーケティング責任者): 経営陣の一員として、経営戦略に基づいたマーケティングの最高意思決定を行う。
  • 年収アップの鍵:
    • 個人のスキルだけでなく、チームの成果を最大化するためのリーダーシップとプロジェクトマネジメント能力。
    • 予算管理能力ROI(投資対効果)に対する強い意識。
    • 経営層と対等に渡り合える戦略的思考力合意形成能力
太田高寛

マネジメントキャリアを目指す上で、プロジェクトマネジメントノウハウは非常に重要です。特に、現場と経営層の目線を合わせて組織としてマーケティング戦略を推進する能力は、単なるマーケティングマネージャーで終わるか、事業全体を動かすリーダーになれるかを分ける大きなポイントです。さらに、戦略を実行する上での関係者との合意形成ノウハウも、年収1,000万円を超えるマネージャーには必須のスキルと言えるでしょう。

未経験から年収を上げる戦略

未経験からマーケティング職に転職する場合、最初の年収は必ずしも高くないかもしれません。しかし、戦略的なスキル習得とキャリア選択によって、入社後3〜5年で年収を大幅にアップさせることは十分に可能です。

STEP 1: デジタルスキルの習得

まず、現代のマーケティングで必須となるWebとデータのスキルを徹底的に習得します。これが、あなたの市場価値の土台となります。

  • 最優先で学ぶべきスキル:
    • Web解析 (GA4): データを見て、Webサイトの課題を発見し、改善提案ができるレベルを目指します。
    • SEO: ユーザーの検索意図を理解し、コンテンツ企画ができるレベルを目指します。
    • Web広告: 少額でも良いので実際に広告を運用し、CPAやCVRといった指標を改善した経験を積みます。

これらのスキルは、「【初心者必見】マーケティングスキルを効率的に学ぶロードマップとおすすめの本・資格」で紹介している学習ロードマップに沿って、体系的に学ぶのが効率的です。

STEP 2: 実践と実績の構築

学習したスキルを活かして、「数字で語れる実績」を作ります。これが、転職や社内での評価に直結します。

  • 実績作りの方法:
    • 現職での貢献: もし可能であれば、現職でWebサイトの分析や改善提案など、マーケティング関連の業務に少しでも関わらせてもらいましょう。
    • 副業・プロボノ: クラウドソーシングサイト(クラウドワークスランサーズなど)でSEO記事作成や広告運用の案件を受注したり、知人のビジネスを手伝ったりすることで、実践経験を積みます。
    • 自己ブログ/Webサイト運営: 最も手軽に始められ、PDCA全体を経験できる方法です。「半年で月間PV数を〇〇から△△に増やした」といった具体的な実績は、最高のポートフォリオになります。

STEP 3: 成長市場への転職

ある程度の実績ができたら、年収水準が高く、かつ成長している市場へ転職することで、年収を大きくジャンプアップさせることができます。

  • 狙い目の業界:
    • SaaS業界: 継続的なマーケティング活動が事業成長に不可欠なため、スキルを持つ人材の需要が非常に高いです。
    • D2C(Direct to Consumer)業界: Web広告やSNS運用による顧客との直接的な関係構築がビジネスの核となります。
    • DX支援・Webコンサルティング業界: 様々な企業のマーケティング課題を解決する経験を積むことができ、スキルと年収の両方を高めやすい環境です。

転職活動では、「マーケティング職の面接対策【完全版】聞かれる質問とSTARメソッドでの回答例文」で解説しているSTARメソッドを活用し、あなたの実績と思考プロセスを論理的にアピールしましょう。


年収1000万超えのスキル

年収1,000万円という一つの大台を超えるためには、単なる施策実行者(オペレーター)ではなく、事業の成長に直接的なインパクトを与えられる「戦略家」としてのスキルが求められます。

「手法」から「戦略」への昇華

年収が600〜800万円のマーケターと、1,000万円を超えるマーケターの最も大きな違いは、「視座の高さ」です。

  • オペレーター: 「どうすればWeb広告のCPAを下げられるか?」という「手法(How)」を考えます。
  • 戦略家: 「そもそも、Web広告に予算を投下し続けるべきなのか?」「事業全体のROIを最大化するためには、どのチャネルに、いくら投資すべきか?」という「戦略(What/Why)」から考えます。

この視座を持つためには、マーケティングだけでなく、財務(P/L、ROI)、営業、プロダクト開発など、ビジネス全体の知識を学ぶ必要があります。

BtoBマーケティングの専門性

特にBtoB(企業間取引)の領域は、顧客の検討期間が長く、取引単価が高いため、高度なマーケティング戦略が求められます。

  • BtoBで求められるスキル:
    • リードナーチャリング: 獲得した見込み客を、MAツール(HubSpotMarketo Engageなど)を使って中長期的に育成し、商談化へと繋げるシナリオ設計能力。
    • The Model型の組織理解: マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスが連携して成果を最大化する「The Model」型の営業プロセスを理解し、その中でマーケティングが果たすべき役割を設計・実行する能力。
    • ABM(アカウントベースドマーケティング): 特定の優良顧客企業(アカウント)をターゲットとして、個別最適化されたアプローチを行う戦略の立案・実行能力。

これらの専門性を高めることで、BtoBマーケターとして高い市場価値と年収を得ることが可能です。

データ分析とインサイト発見力

全てのマーケティング活動の土台となるのが、データから顧客の真のニーズを読み解く「インサイト発見力」です。

  • 年収1,000万円を超える分析スキル:
    • GA4のレポートを見るだけでなく、SQLを使ってデータベースから直接データを抽出し、BIツール(TableauGoogle Looker Studioなど)で可視化・分析できる。
    • 定量データ(Webアクセス解析など)と、定性データ(顧客インタビュー、アンケートなど)を組み合わせ、データの裏にある「なぜ?」を深く洞察できる。
太田高寛

インサイト発見力を高める上で、弊社のリサーチノウハウは強力な武器になります。特に、ターゲットユーザーを特定しづらいサイコグラフィック(心理的要因)でセグメントしたユーザー層だけのアンケートを低価格で取得するノウハウは、競合が見えていない顧客の深層心理を捉え、競争優位性のある戦略を立てる上で不可欠です。また、意味ある1次情報になるアンケート設計ノウハウも、データ分析の質を根本から変える重要なスキルです。

転職エージェントの活用法

年収アップを目的とした転職を成功させるためには、転職エージェントを戦略的に活用することが非常に有効です。

マーケティング職に強いエージェント

総合型のエージェントだけでなく、マーケティングやIT/Web業界に特化したエージェントを併用することで、より専門性の高いサポートと、質の高い非公開求人に出会うことができます。

エージェント名特徴
リクルートエージェント業界最大級の求人数を誇る総合型エージェント。幅広い業界・職種の求人を比較検討したい場合に最適。
doda転職サイトとエージェントサービスの両方を展開。特にIT・Web業界の求人に強く、専門のキャリアアドバイザーが在籍。
JACリクルートメントハイキャリア・高年収層に特化したエージェント。管理職や外資系企業への転職に強みを持つ。年収800万円以上を目指すなら登録必須。
マスメディアンマーケティング・クリエイティブ職に特化したエージェント。広告代理店や事業会社のマーケティング部門への転職に豊富な実績を持つ。

エージェントとの効果的な付き合い方

  • 経歴と希望を正直に伝える: あなたのスキルセットや今後のキャリアプランを正直に伝えることで、エージェントはあなたに最適な求人を提案しやすくなります。
  • 推薦文を確認させてもらう: 企業に応募する際の推薦文は、エージェントが作成します。提出前に内容を確認させてもらい、自分の強みが的確に伝わっているかをチェックしましょう。
  • 複数のエージェントに登録する: 担当者との相性や、エージェントが持つ求人の特性も様々です。2〜3社のエージェントに登録し、客観的なアドバイスを得るのがおすすめです。

まとめ:市場価値の戦略的向上

本記事では、マーケティング職の年収相場と、年収を上げるための具体的なキャリアパスについて解説しました。

  • マーケティング職の平均年収は約600万円と高い水準ですが、スキルと経験によって大きな差が生まれます。
  • 年収を上げるキャリアパスには、専門性を極める「スペシャリスト」と、組織を動かす「マネジメント」の2つの方向性があります。
  • 未経験から年収を上げるには、「デジタルスキル習得」→「実績構築」→「成長市場への転職」という3ステップが王道です。
  • 年収1,000万円以上を目指すには、手法をこなすオペレーターから脱却し、事業全体の視点を持つ「戦略家」へと進化する必要があります。
  • 特にBtoBマーケティングの専門性や、データからインサイトを発見する力は、あなたの市場価値を飛躍的に高めます。

あなたの年収は、あなたの「市場価値」によって決まります。そして市場価値とは、「企業が抱える課題を、あなたが持つスキルでどれだけ解決できるか」の対価です。

この方程式を常に意識し、戦略的にスキルを磨き、適切な市場(企業)を選ぶことで、あなたの理想とするキャリアと年収は、必ず実現できるはずです。


よくある質問 (FAQ)

WebマーケターとWebディレクターでは、どちらが年収が高い傾向にありますか?

一般的には、Webマーケターの方が年収の上限が高い傾向にあります。WebディレクターはWebサイトの制作進行管理が主な役割であるのに対し、Webマーケターは制作されたサイトを使って「いかにして事業の売上・利益を最大化するか」という、より事業の根幹に近い部分に責任を負うためです。ただし、大規模なWebサイトの統括責任者となるようなトップクラスのWebディレクターは、マーケティング戦略にも深く関わるため、高い年収を得ているケースも多くあります。

フリーランスのマーケターとして独立した場合、年収はどのくらいになりますか?

フリーランスの年収は、個人のスキルと営業力によって青天井である一方、不安定になるリスクもあります。実務経験が豊富なSEOコンサルタントや広告運用スペシャリストの場合、複数のクライアントと契約することで年収1,000万円〜2,000万円を実現している方も少なくありません。ただし、成功するためには、マーケティングスキルに加えて、案件を獲得するための営業力、価格交渉力、そして自己管理能力が不可欠です。

30代未経験からマーケティング職に転職して、年収を上げることは可能ですか?

十分に可能です。 30代未経験の場合、ポテンシャル採用の20代とは異なり、前職で培ったビジネススキルをマーケティングの仕事にどう活かせるかをアピールすることが鍵となります。例えば、営業経験者であれば顧客理解力や交渉力企画職経験者であればプロジェクトマネジメント能力など、マーケティングと親和性の高いスキルを前面に出しましょう。最初の年収は前職より下がる可能性もありますが、入社後にデジタルスキルと実績をキャッチアップすることで、3〜5年で前職以上の年収を目指すことは現実的な目標です。