この記事でわかること
  • ES(Employee Satisfaction/従業員満足度)とEE(Employee Engagement/従業員エンゲージメント)の明確な定義と、決定的な違い。
  • なぜ「満足しているだけ」のES重視の組織が、現代のビジネス環境では成長しづらいのか。
  • インナーブランディングがEE(能動的な貢献意欲)を最大化する戦略的な役割。
  • EEを高めることが、生産性向上、離職率低下、顧客満足度(CSAT)向上に繋がる具体的なメカニズム。
  • TSRコンサルティングの太田代表の知見に基づいた、ES/EEを両面から改善した成功事例とノウハウ。
  • ES/EEの状態を正しく把握し、エンゲージメントを高めるための具体的な施策とツール。

「ESとEE、どっちも社員の気持ちに関わる言葉だけど、具体的に何が違うんだろう?」

もしあなたが今、インナーブランディングや社内施策の担当者として、あるいは将来マーケターとして組織の成長に貢献したいと考えているなら、この2つの違いを明確に理解することは極めて重要です。なぜなら、単なる「満足(ES)」を追求するだけでは、企業は持続的な成長を望めないからです。

現代の企業経営、特にインナーブランディングの文脈において本当に目指すべきは、社員が会社の目標やビジョンに深く共感し、「自発的に貢献したい!」と強く願う「従業員エンゲージメント(EE)」です。この能動的な意欲こそが、サービスの質を高め、顧客満足度を向上させ、ひいては企業価値全体を押し上げるエンジンとなります。

この記事では、TSRコンサルティングが持つインナーマーケティングの知見に基づき、ESとEEの核心的な違いを徹底的に解説します。そして、インナーブランディングを通じてEEを最大化し、社員一人ひとりが能動的な貢献者となるための具体的なロードマップと戦略をご紹介します。

この記事を読み終える頃には、あなたはインナーブランディングの目的を明確に理解し、次の打ち手に繋がる具体的なヒントを得られるはずです。

目次
  1. 1. EEとESの明確な違い:能動的か受動的か
    1. ES(Employee Satisfaction/従業員満足度)の核心
    2. EE(Employee Engagement/従業員エンゲージメント)の核心
    3. 決定的な違いは「貢献意欲の有無」
  2. 2. ESだけでは不十分な理由:能動的貢献の限界
    1. 満足は「現状維持」を意味する
    2. 「良い条件」があればすぐに流出する
    3. インナーブランディングが目指すべきは「主体的価値創造」
  3. 3. インナーブランディングはEEを目指す戦略
    1. インナーブランディングの定義と目的
    2. EEが向上するインナーブランディングのプロセス
  4. 4. EEが企業成長に効く仕組み:三つのメリット
    1. メリット1:生産性の向上とイノベーションの促進
    2. メリット2:離職率の低減と採用コストの削減
    3. メリット3:顧客満足度(CSAT)の向上
  5. 5. EE向上の具体的な施策事例と成功のポイント
    1. 軸1:ビジョン・理念の「共感」浸透施策
    2. 軸2:コミュニケーションの「量と質」活性化施策
    3. 軸3:フィードバック・「承認」の機会創出施策
    4. ツール比較:エンゲージメント向上に役立つ主要なSaaS
  6. 6. ES・EEを測る調査設計の秘訣:意味ある一次情報
    1. 秘訣1:ESとEEの設問を明確に分ける
    2. 秘訣2:定量と定性のバランスを取る
      1. TSRコンサルティング 太田の知見:リサーチノウハウ
    3. 秘訣3:サーベイの結果を「共有」し「対話」を生む
  7. 7. 能動的な貢献意欲を生むロードマップ
    1. STEP1:目的とビジョンの「認知・理解」
    2. STEP2:企業価値への「共感・内発的動機」
    3. STEP3:貢献の「行動・体現」
    4. STEP4:貢献の「評価・フィードバック」
  8. まとめ
  9. FAQ
    1. Q1. ES(従業員満足度)を高める施策を先に実施しないと、EE(エンゲージメント)を高めるのは難しいですか?
    2. Q2. 社内コミュニケーションツールを導入すれば、自動的にエンゲージメントは向上しますか?
    3. Q3. マーケティング部門の社員がES/EEの違いを理解することで、どのようなメリットがありますか?
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  11. 参考情報

1. EEとESの明確な違い:能動的か受動的か

【サマリ回答】 ES(従業員満足度)は、給与や福利厚生、職場環境といった外部要因に対する「受け身の満足」を示す受動的な概念です。一方、EE(従業員エンゲージメント)は、企業のビジョンや目標に共感し、「会社のために自ら貢献したい」と願う「自発的・能動的な貢献意欲」を示す概念であり、両者は似て非なるものです。インナーブランディングが最終的に目指すのは、このEEの向上です。

従業員のモチベーションや組織に対する意識を表す指標として、ESとEEはしばしば同じように語られがちですが、両者は全く異なる概念であり、組織にもたらす影響も大きく異なります。

ES(Employee Satisfaction/従業員満足度)の核心

ESは、Employee Satisfactionの略で、従業員満足度と訳されます。

これは、社員が自分の仕事や職場の環境、待遇などに対してどれくらい満足しているかという「受動的な状態」を示します。

  • 関心の対象: 職場環境、給与、福利厚生、人間関係、業務内容、労働時間など
  • 状態: 「現状に不満がない」「居心地が良い」
  • 指向性: 外部要因(会社から与えられるもの)に対する評価

ESが高い状態とは、「この会社は給料が良いから」「残業が少ないから」といった理由で、今の職場に満足し、留まっている状態を指します。しかし、これはより良い条件の会社が現れた場合、すぐに転職してしまう可能性を秘めています。

EE(Employee Engagement/従業員エンゲージメント)の核心

EEは、Employee Engagementの略で、従業員エンゲージメントと訳されます。

これは、社員が企業の理念やビジョンを正しく理解し、支持した上で、「企業の成長のために自発的に貢献したい」「この会社の一員として目標達成に力を尽くしたい」という強い意欲を持つ「能動的な状態」を示します。

  • 関心の対象: 企業のビジョン、理念、戦略、自身の役割と貢献、仕事の意義
  • 状態: 「企業に貢献したい」「目標達成にコミットする」「企業との一体感」
  • 指向性: 内部要因(自分と企業との関係性)に対する意欲

エンゲージメントが高い社員は、たとえ目の前の待遇が少し悪くても、会社の未来を信じ、自ら改善提案を行ったり、一歩踏み込んだ行動をとったりします。これは、企業と社員が対等な立場で深い信頼関係で結ばれている状態といえます。

決定的な違いは「貢献意欲の有無」

項目ES(従業員満足度)EE(従業員エンゲージメント)
定義職場環境・待遇などに対する「受け身の満足」企業理念への共感に基づく「能動的な貢献意欲」
主語会社(会社が私に何をしてくれるか)自分(私が会社に何をできるか)
状態居心地の良さ、不満のなさ企業との一体感、相互理解、コミットメント
結果離職率の低下(維持)、現状維持の仕事生産性・CSATの向上、自発的な行動変容、成長

2. ESだけでは不十分な理由:能動的貢献の限界

【サマリ回答】 ESが高いだけの社員は、「現状維持」を求める傾向が強く、変化や挑戦、イノベーションには消極的になりがちです。待遇への不満はないものの、企業成長に必要な「一歩踏み込んだ行動」や「困難な課題への挑戦」が生まれないため、市場の変化が激しい現代において、ESのみを重視する経営戦略には限界があります。

ESの向上が悪いことではありません。給与や環境が劣悪な状況で、エンゲージメントが高い状態を維持するのは非常に困難です。ESは、EEを築くための「土台」としては不可欠です。

しかし、ESだけでは以下の理由から、現代の企業成長に必要な原動力とはなり得ません。

満足は「現状維持」を意味する

ESが高い状態は、裏を返せば「今のままでいい」という現状維持志向を生み出します。

  • リスク: 変化を嫌い、新しい提案や業務改善に対して非協力的になる。
  • 結果: 企業全体の成長スピードが落ち、競合に遅れをとる。

「良い条件」があればすぐに流出する

ESはあくまで外部要因に対する満足度であるため、より好条件を提示する競合他社が現れれば、社員は容易に転職してしまいます。

エンゲージメントは、企業理念への共感という「精神的な結びつき」がベースにあるため、多少の待遇差では揺るがない強固な関係性を築きます。

インナーブランディングが目指すべきは「主体的価値創造」

マーケティングの成功は、顧客への提供価値の最大化にかかっています。そして、顧客に価値を届けるのは、現場で働く社員です。

EEが高い社員は、

  1. 企業理念を体現:会社のビジョンに基づいた行動をとる。
  2. 自発的な改善:顧客の課題解決のために、自ら業務プロセスやサービスを改善する。
  3. 情熱的な対応:顧客に情熱と献身を示し、結果的にCSATを向上させる。

という「能動的な価値創造」を行います。ESだけの社員は、与えられたタスクをこなすだけになりがちであり、この能動的な貢献は期待できません。

太田高寛

過去に5000人の派遣技術社員を抱える企業のインナー課題を解決した際、まず取り組んだのは『給与や評価の待遇面の改善』でした。これはまさにESを高める施策です。しかし、それだけではダメで、次に『情報が一元化されていない部分に対する社内プラットフォームの構築』を進めました。これは、企業の情報やビジョンを浸透させ、社員が自分の仕事の意義や会社との繋がりを感じる、つまりEEを高めるための施策です。ESで土台を固め、EEで能動的な貢献意欲を引き出す、このバランスこそが重要です。

3. インナーブランディングはEEを目指す戦略

【サマリ回答】 インナーブランディング(IB)とは、「企業ブランドを従業員に深く理解・浸透させ、企業理念を体現できる従業員を増やす活動」です。この活動の核心は、単なる情報の伝達ではなく、理念への「共感」を生み出し、EE(従業員エンゲージメント)を最大化することにあります。IBによって、社員は自分の仕事と会社のビジョンが結びついていることを理解し、自発的な貢献へと繋がります。

インナーブランディングは、EEを向上させるための最も強力で戦略的なアプローチです。

インナーブランディングの定義と目的

インナーブランディングの目的は、企業理念、ビジョン、バリュー(MVV)を従業員に深く理解・浸透させることで、「企業ブランドを体現できる従業員」を増やし、組織の競争力を高めることです。

この「理念を体現する」という行為こそが、EEの本質と完全に一致します。

概念目的EEとの関連
インナーブランディング企業の「存在意義」と「未来像」の浸透理念への共感とコミットメントを生む
EE(エンゲージメント)企業の「成功」への自発的貢献意欲IB活動が創出する能動的な心理状態

インナーブランディングは、EEという心理状態を意図的かつ戦略的に作り出すための経営施策と言い換えられます。

EEが向上するインナーブランディングのプロセス

インナーブランディングがEEを高めるのは、以下の心理的なプロセスを経るからです。

  1. 理解(Knowledge): 企業がMVVや事業戦略を丁寧に説明する。
  2. 共感(Empathy): 従業員が「このビジョンは素晴らしい」「自分の仕事は社会の役に立っている」と感じる。
  3. 内発的動機(Motivation): 共感を通じて「自分もこの実現のために貢献したい」という内発的な動機が生まれる(EEの誕生)。
  4. 行動変容(Action): 企業理念に基づいた主体的な行動(顧客への献身、改善提案など)をとる。

このプロセス全体を設計し、実行していくのがインナーブランディングです。

太田高寛

「弊社では、まずWHO-WHATを緻密に行い、会社としての顧客価値を可視化する戦略設計ノウハウを持っています。インナーブランディングの最初のステップは、この顧客価値や競争優位の源泉にあるUSP(独自の強み)を明確にすることです。社員は、自社の強みと顧客への提供価値が明確になった時、初めて自分の仕事の意義を深く理解し、能動的な貢献意欲(EE)が湧いてくるのです。」

4. EEが企業成長に効く仕組み:三つのメリット

【サマリ回答】 従業員エンゲージメント(EE)の向上は、組織に「生産性の向上」「離職率の低減」「顧客満足度(CSAT)の向上」という複合的なメリットをもたらします。EEが高い社員は、自律的に考え、熱意を持って行動するため、作業効率が上がり、長期的に会社に留まり、その情熱が顧客に伝わることで、企業価値全体の向上に貢献する好循環が生まれます。

EEは、人事領域だけの話ではなく、企業の事業成長に直結する戦略的なKPIです。EEが高まることで得られる主要な3つのメリットを解説します。

メリット1:生産性の向上とイノベーションの促進

EEが高い社員は、仕事に対して「やらされ感」ではなく、「自発的な意欲」を持って取り組みます。

  • 作業効率アップ: 会社の方針を理解しているため、無駄な確認作業が減り、業務効率が格段に向上します。
  • 自律的な改善: 課題に直面した際、上司の指示を待つのではなく、自ら解決策を考え、行動に移します。これが小さなイノベーションの積み重ねとなり、企業全体の競争力を高めます。

メリット2:離職率の低減と採用コストの削減

EEが高い社員は、単なる待遇ではなく、企業のビジョンやそこで働く仲間との関係性に愛着を感じています。

  • 定着率向上: 強い精神的な結びつきがあるため、多少の不満や外部からの誘惑があっても、会社に留まる傾向が強くなります。
  • 採用コスト削減: 離職率が下がれば、新たな人材を採用・教育するコストと時間が大幅に削減されます。また、エンゲージメントの高い社員は、自社のことを積極的に発信するため、優秀な人材が集まりやすくなるという「採用ブランディング」の効果も期待できます。

メリット3:顧客満足度(CSAT)の向上

これは、マーケティングの視点から見て最も重要なメリットの一つです。

エンゲージメントの高い社員は、顧客に対しても企業理念に基づいた情熱的で質の高いサービスを提供します。

  • サービスの質: 理念を理解している社員は、マニュアルを超えた「顧客の期待を超える対応」を自発的に行います。
  • ブランド体現: 社員一人ひとりがブランドの体現者となるため、顧客はサービスを通じて企業が目指す価値観を深く感じ取ることができます。

5. EE向上の具体的な施策事例と成功のポイント

【サマリ回答】 EE向上のための具体的な施策は、「ビジョン・理念の浸透」「コミュニケーションの活性化」「フィードバック・承認の機会創出」の3つの軸で実施されます。成功のポイントは、理念を抽象的なものに終わらせず、具体的な「行動指針」として落とし込み、社内コミュニケーションツールなどを活用して継続的・多角的に発信し続けることです。

EEを高める施策は、ESのように待遇改善(ハード)に偏るのではなく、企業と社員の相互理解を深める(ソフト)活動が中心になります。

軸1:ビジョン・理念の「共感」浸透施策

単に理念をポスターにするだけでなく、社員の心に響かせ、行動に結びつけるための施策です。

施策例詳細ポイント
理念浸透ワークショップ経営層と社員が対話形式で理念を解釈し、自身の業務との繋がりを見つける。一方的な伝達ではなく、「対話」と「自己解釈」を促す。
インナーブランディングブック理念や行動指針を、写真やストーリーを用いて感情に訴えかけるデザインで作成する。企業の歴史や成功事例を交え、具体的に「理念が体現された瞬間」を示す。
理念体現者アワード理念に基づいた行動をした社員を具体的に承認し、全社に共有・表彰する。評価基準を明確にし、称賛の機会を増やす。

軸2:コミュニケーションの「量と質」活性化施策

部門や役職を超えた情報共有と交流は、相互理解を深め、エンゲージメントの土台を作ります。

  • 社内SNS・プラットフォーム(例:TUNAG
  • 経営層からのメッセージや事業進捗をリアルタイムに共有し、透明性を確保する。
  • 社員同士が「いいね」やコメントで感謝や承認を送りあえる仕組みを作る。
  • シャッフルランチ・部活動支援
  • 普段関わらないメンバーとの交流機会を提供し、横の繋がりを強化する。

軸3:フィードバック・「承認」の機会創出施策

社員が自分の仕事が会社に貢献していると感じるためには、適切なフィードバックと承認が不可欠です。

  • 360度フィードバック
  • 上司だけでなく、同僚や後輩からもフィードバックを受け取ることで、多角的に自己成長を促す。
  • 1on1ミーティングの質の向上
  • 上司は部下の「キャリア観」や「仕事の意義」について対話する時間を確保し、エンゲージメントの源泉を探る。

ツール比較:エンゲージメント向上に役立つ主要なSaaS

インナーブランディングとEE向上施策を効果的に行うには、デジタルの力、特に社内コミュニケーションSaaSの活用が欠かせません。

ツール名特徴とEEへの貢献発リンク例
TUNAG(ツナグ)理念浸透、社内制度運用、サンクスカードなど、エンゲージメント施策の運用に特化した機能が豊富。組織の状況を定量的に把握できる。TUNAG(ツナグ)
カオナビ(Kaonavi)人材情報を可視化し、適切な人材配置や評価を行うことで、社員の納得感(EEの土台)を高める。カオナビ(Kaonavi)
Wevox(ウィボックス)エンゲージメントサーベイをSaaS化。高頻度で従業員のコンディションを測定し、すぐに改善サイクルを回せる。Wevox(ウィボックス)

EE向上は、単なるツールの導入ではなく、「このツールを使って、どんな理念を、誰に、どのように浸透させるか」という戦略が最も重要です。

6. ES・EEを測る調査設計の秘訣:意味ある一次情報

【サマリ回答】 ES/EEの向上を目的とした調査(サーベイ)を成功させる秘訣は、単に満足度を測るだけでなく、「なぜその満足度なのか」という深掘りができる設問設計と、それを組織改善に活かせる分析ノウハウにあります。特に、自由記述やインタビュー設計を工夫することで、企業の課題解決に直結する「意味ある一次情報」を引き出すことが可能になります。

ESやEEの現状を把握し、施策の効果を検証するために、サーベイ(調査)は不可欠です。しかし、「なんとなくやってみた」調査では、組織の改善に繋がる「意味ある一次情報」は得られません。

秘訣1:ESとEEの設問を明確に分ける

調査では、ESとEEのどちらを測っているのかを明確に意識した設問設計が必要です。

指標設問例測定対象
ES「あなたの給与・評価制度に満足していますか?」待遇・環境の受動的な満足度
EE「あなたは会社のビジョン達成に貢献したいと感じますか?」理念への共感・能動的な貢献意欲
相関「あなたの仕事は会社の理念に繋がっていると感じますか?」満足度と貢献意欲の結びつき

両方を測ることで、ESは高いがEEが低い「現状維持型社員」の割合などを正確に把握することができます。

秘訣2:定量と定性のバランスを取る

アンケート(定量調査)で全体の傾向を掴むだけでなく、その背後にある社員の「本音」を引き出す定性調査が、施策の具体的なヒントとなります。

  • 定量(アンケート): 全体のスコア、部門間の比較、経年変化を把握。
  • 定性(インタビュー): 定量調査で「スコアが低い」と出た項目に対し、「なぜそう感じたのか」という深層心理や具体的な事例を深掘りする。

定性的な情報は、施策の企画や経営層への提言において、最も説得力のある根拠となります。

TSRコンサルティング 太田の知見:リサーチノウハウ

「弊社では、意味ある1次情報になるアンケート設計ノウハウと、社内のだれでもハイクオリティのインタビューが出来るインタビュー設計ノウハウを持っています。特にEEやインナーブランディングの文脈では、社員の真意は定量データだけでは見えません。現場の社員が経営層に遠慮なく本音を語れるような安心・安全な場づくりと、その本音から隠れた組織課題や成功要因を引き出すインタビュー設計こそが、施策の成功を左右します。」

秘訣3:サーベイの結果を「共有」し「対話」を生む

サーベイで得られた結果を共有せず、一部の人事担当者だけで秘匿してしまうのは最悪のケースです。結果を全社員に共有し、「この結果を受けて、会社はこう変わる」「あなたはどう貢献したいか」という対話のきっかけにすることが、エンゲージメントをさらに高めます。

EEが高い組織は、自分たちの組織がどう評価されているかを知り、その改善に自ら参加したいと考えるからです。

7. 能動的な貢献意欲を生むロードマップ

【サマリ回答】 EE(エンゲージメント)を継続的に向上させるには、単発の施策ではなく、「認知・理解」「共感・内発的動機」「行動・体現」「評価・フィードバック」の4ステップからなるロードマップを組織全体で回し続けることが重要です。経営層と現場の目線を合わせ、インナーブランディングをマーケティング戦略の一環として推進することで、能動的な貢献意欲を持つ組織へと変革します。

EE向上は、一朝一夕に実現するものではありません。戦略的なロードマップに基づき、計画的に進めることが不可欠です。

STEP1:目的とビジョンの「認知・理解」

すべての始まりは、企業がどこに向かっているのかを社員に正確に伝えることです。

  • アクション: MVVの再定義(または明確化)、戦略発表会、企業理念のストーリー化。
  • 目標: 全社員が「当社の存在意義(パーパス)」と「目指す未来(ビジョン)」を自分の言葉で説明できるようになること。

STEP2:企業価値への「共感・内発的動機」

理念を「知識」から「感情」へと昇華させるステップです。

  • アクション: 理念ワークショップ、成功事例の社内発信、経営層と現場の対話(タウンホールミーティング)。
  • 目標: 社員の大多数が「この会社で働くことに意義を感じる」「この理念に賛成し、貢献したい」という内発的動機を持つこと。

STEP3:貢献の「行動・体現」

内発的動機を行動に移し、企業価値を体現する社員を増やすステップです。

  • アクション: 行動指針に合わせた評価制度の改定、社内コミュニケーションツールの活用、部門を超えたプロジェクトチーム組成。
  • 目標: 顧客対応や日常業務の意思決定において、行動指針に基づいた主体的な行動が増えること。

STEP4:貢献の「評価・フィードバック」

能動的な貢献行動に対し、正しく光を当て、次の意欲に繋げるためのサイクルです。

  • アクション: ピアボーナス制度(サンクスカード)、理念体現者アワード、EEサーベイに基づくフィードバック面談。
  • 目標: 社員が自分の行動が正しく評価され、会社に貢献しているという「実感」を得ること。
太田高寛

EEを高める活動は、人事や広報といった一部署だけで完結するものではありません。私たちは、現場と経営層の目線を合わせて組織としてマーケティング戦略を推進するプロジェクトマネジメントノウハウを持っています。インナーブランディングにおいても、現場の社員の声を定量・定性で拾い上げ、それを経営層の意思決定に反映させ、施策として現場に実行させるという、この『目線合わせ』の機能が、能動的な貢献意欲を組織全体で生み出す鍵となります。

まとめ

ES(従業員満足度)とEE(従業員エンゲージメント)の最も決定的な違いは、その「貢献意欲」の方向性です。ESは給与や待遇といった外部要因に対する受動的な満足に留まるのに対し、EEは企業のビジョンへの共感に基づく能動的な貢献意欲を指します。

インナーブランディングが目指すべきは、このEEの最大化です。社員が「この会社のために頑張りたい」と自発的に思える状態こそが、生産性の向上、離職率の低下、そして顧客満足度の向上という、企業成長の根幹を支える三つの大きなメリットを生み出します。

EEを向上させるためには、まずESで働く環境の土台を築きつつ、「理念浸透」「コミュニケーション活性化」「承認・フィードバック」という3つの軸で戦略的な施策を継続的に実行することが重要です。TSRコンサルティングは、マーケティング戦略全体を俯瞰する視点から、このEEを最大化するためのインナーマーケティング戦略設計を支援しています。ぜひ、貴社の組織を能動的な貢献意欲に満ちた強い組織へと変革させるための一歩を踏み出してください。

FAQ

Q1. ES(従業員満足度)を高める施策を先に実施しないと、EE(エンゲージメント)を高めるのは難しいですか?

A1. はい、ESはEEの土台として極めて重要です。給与や労働環境といった基本的な満足度が著しく低い状態で、「理念への共感」や「能動的な貢献」を求めても、それは単なる精神論に聞こえてしまい、逆効果になる可能性が高いです。インナーブランディングの施策を進める際は、まず「社員が仕事に集中できる最低限の環境と待遇(ES)」が確保されているかを確認し、その上で「企業との精神的な結びつき(EE)」を強化する施策を並行して、あるいは段階的に進めるのが成功へのロードマップです。

Q2. 社内コミュニケーションツールを導入すれば、自動的にエンゲージメントは向上しますか?

A2. いいえ、ツールの導入自体は手段であり、目的ではありません。社内コミュニケーションツール、例えばTUNAGのようなSaaSは、エンゲージメント施策を「継続的」かつ「多角的に」実行するための強力な基盤となります。しかし、ツール内で「理念体現者の表彰」や「経営層からの本音の発信」といったEEを高めるためのコンテンツと運用ルールがなければ、単なる情報共有ツールで終わってしまいます。ツールの導入と同時に、それを活用して「誰の」「どんな行動」を「どのように称賛する」という運用設計とインナーブランディング戦略が必要です。

Q3. マーケティング部門の社員がES/EEの違いを理解することで、どのようなメリットがありますか?

A3. マーケティング初心者のあなたがES/EEの違いを理解することは、キャリアにおいて大きなメリットとなります。なぜなら、EEの高い組織は「顧客満足度の高いサービス」を安定的に生み出すからです。マーケターは、企業のブランドや価値を顧客に伝える役割を担いますが、その価値を体現しているのはエンゲージメントの高い社員です。EEを深く理解することで、あなたは「アウター(顧客向け)マーケティング」と「インナー(社員向け)マーケティング」を連携させる視点を持つことができ、より本質的で効果的なマーケティング戦略を立案できるようになります。

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参考情報