この記事でわかること
  • 営業人材がマーケティング視点を持つことで生まれる「一貫した顧客体験」の重要性
  • インナーブランディングの価値を上位者がしっかりと認識する事の重要性
  • インナーブランディングの一環として施策「社員教育・ワークショップ」の実現プロセス
  • 現場の営業マンがマーケティングを武器にするための具体的なステップ

先日とある不動産コンサルティング会社様からのご依頼を受けて、合計50名弱の営業社員に対してWEBマーケティングの考え方、向き合い方に関する社内セミナーを開催いたしました。

ご依頼主の部長様は、自社の営業社員たちの役割を、「昔ながらのただクロージングするだけの営業」ではなく、「WEBによる集客、リード獲得、ナーチャリング、成約といった顧客体験(CX)やマーケティングファネルをしっかりと理解して、一貫した顧客体験を設計できる人材」に変えていかなければならないという、まさに「インナーブランディング」に直結する課題感を抱えていらっしゃいました。

今の時代を適切に捉え、事業成長のための素晴らしい課題設定だと強く共感したため、私でお手伝いできることがないかを考え、最終的には社内セミナーという形で今回実施を致しました。

この記事では本セミナー開催の目的や効果的なセミナーになるための課題やプロセス、セミナー当日の準備など、実際開催してみての効果や所感をレポートします。今、すこしでも社内のインナーブランディングやマーケティング組織に課題感がある方にとって参考になる内容ですので是非ご覧ください。

先にざっくり結論|上位者の「危機感」がインナーマーケティングを成功させる

インナーブランディング(インナーマーケティング)や組織改革において最も重要なのは、現場への指示ではなく、今回のご依頼主のように「上位者が明確な課題意識を持ち、進むべき方向を提示すること」だと改めて感じました。

営業が単なる「売り子」ではなく、クライアントの事業を共に伸ばす「マーケティングパートナー」へと進化するためには、スキルの習得以上に「なぜ今、この視点が必要なのか」というマインドセットの共有が欠かせません。この「共通認識の形成」こそが、インナーブランディングの核となりうるのです。

講義の内容のなかでも第一章に「マインドセット」をお話しし、自身の役割は「売ること」ではなく「顧客体験を設計する、売る仕組みを作る」に認識を変え、それをWEBチームやパートナー企業の丸投げではなく「自分が主導権をもってコントロールする」立場だと何度もしつこくお話をさせていただきました。

太田高寛

上位者の強い課題意識、そして想いを受け取れたので、セミナーの内容や話す力量、使う単語など細部にまでこだわったセミナーに出来たと感じました。このセミナーだけでなく今後の活動を通して、インナーブランディングの成功につながるためにはこの「上位者の強い課題意識」が最も大事だと私自身も改めて学ばせていただきました。


プログラムのテーマ「営業」と「マーケティング」を繋ぐを軸に講義を設計

今回のセミナーでは、単にWEBマーケティングの用語を教えるのではなく、営業の日常業務がいかにマーケティングと地続きであるかを実感してもらうプログラムを組みました。

  1. 市場環境の変化と営業の役割再定義: なぜ今、クロージング力だけでは通用しないのか
  2. 顧客体験(CX)の解剖: WEB広告をクリックした瞬間の心理から、商談での納得感まで
  3. マーケティングファネルの実践: リード獲得から成約までの「情報の断絶」をどう埋めるか
  4. パートナーとしての提案力: クライアントのマーケティング課題をどう見つけ、解決するか

特に、実際の不動産マーケティングのフローを事例に出し、「集客段階でどんな期待値を抱かせれば、営業現場での成約がスムーズになるか」という逆算の思考法を徹底的に伝わるように講義プログラムを設計し、スライド1枚1枚を作成してました。

最初は伝えたいことはスライド60枚以上にも及び、そんなボリュームを如何にすんなり伝えるかとても難しいセミナーでした。

セミナー実施までのプロセス|限られた時間で効果を最大化するための工夫

上記のプログラムをしっかり作りこんでセミナーとしてお話をするだけでは絶対にうまく伝わらないと判断し、2時間のセミナーだけに限らず、セミナーの前後での時間も含めたセミナーの設計を改めて行うと決め、準備のプロセスで、非常に細かい箇所まで工夫を凝らしました。

  1. 徹底的なヒアリング:上位層が描く理想像と、現場が感じている「壁」のGAPを可視化
  2. 事前ワークの導入:時間の有効活用にもなりますし、講義参加の意識を向けたり、事前に参加者がどの程度の理解をしているかなど様々なメリットがあると判断し、急遽事前ワークの資料作成を実施。
  3. 講義冒頭に開催企画者より挨拶:クライアント企業の「今」もっともホットな話題にセミナー開催の背景や意図を絡めて、セミナーの必要性や重要性を認識させてから講義受講に移るといった工夫。
  4. 講義内で30分前後のワークを導入:セミナー受講後の記憶に残すためには体験型のコンテンツを盛り込み、「あの時やったあれ」という想起をしやすいコンテンツになるよう工夫。
  5. 座席指定とネームプレートの準備:名指して指された授業は忘れづらい。そんなセミナーであるために、事前に名指しで質問をふれるように座席を指定して座席表とネームプレートで当日指名がスムーズにできる工夫。
  6. 講義中はアドリブ重視:講師として台本通り進める意識は持ちつつ、当日の温度感、空気感に合わせて柔軟な進行になるようアドリブを重視。作られたフォーマット感はやらされている感が出てしまうのでそうならないよう意識した進行への工夫。
  7. 最後に時間内でのアンケート実施:後でのアンケートと後でのアンケート結果の確認は前に進まない。セミナー受講後の最も温度感が高い受講者の声をすぐ聞き、すぐ見て、すぐ次どうすればいいかの材料を得る工夫

それぞれを詳しく振り返ってみます。

1,徹底的なヒアリング

ご依頼いただいた企画者やその上位者の方々の描く理想像、セミナーが終わった後の湯上り感と、現場が感じている「壁」を洗い出して、GAPをまずは可視化するというプロセスを工夫しました。

当たり前かもしれませんが、いざ準備が進んでいくと徐々にあれもこれもやりたがって軸がぶれていきます。そんなリスクを回避する上でも、最初にGAPを認識し、それを「可視化」することで、プロジェクト進行中でも軌道修正が効くという状況を作ったのはインナーブランディングセミナーを開催するうえで非常に重要でした。

2,事前ワークの導入

セミナー時間が限られているため、セミナーの時間をフルに有効活用するためにも事前に知識を最低限いれておくという流れで事前ワークを盛り込みました。これにより講義参加の意識を高めたり、事前に参加者がどの程度の理解をしているかなどの様々な副次的なメリットもあると判断し、急遽事前ワークの資料作成を実施しました。

インナーブランディングセミナー開催前の事前ワーク
インナーブランディングセミナー開催前の事前ワーク。Googleフォームで実現。

3,講義冒頭に開催企画者より挨拶

これはとても効果的でした。

いきなり外部講師が挨拶してスタートではなかなか聞きにくいかなというところで、講義前日までの社内の最新事情を知っている今回の企画者の方に、最新の社内の事情や関心毎にうまく絡めてこの後の講義の意味や価値を伝えていただきました。

たまたま直近で代表から全社員へメッセージがあったとのことで、その内容とうまくリンクさせ、社長からのメッセージの重みが乗っかった大変重要な講義という位置づけにできたことで参加者の参加意欲、姿勢は明らかに変わったのがとても印象的でした。

4,講義内で30分前後のワークを導入

これも当たり前ではありますが、強く意識し、ワーク内容から順番、個数、進め方などあらゆる箇所にこだわりを持ったワークショップのコンテンツを導入しました。「聞く」セミナーではなく、「体験する」セミナーにすることで記憶に残りやすくし、「あの時やったあれ」という想起をしやすいコンテンツになるよう工夫しました。

アンケート結果でも、講義全体のプログラムの中でこのワークが最も満足度が高く、体験からポジティブな感情を持って次の機会に進ませる設計は、今後のインナーブランディング活動において最重要だなと改めて感じました。

5,座席指定とネームプレートの準備

これも当たり前だと思われるかもしれませんが、侮ると最終的なセミナーの品質は全く異なってきます。

まず当日不参加は必ず発生します。そのため。その時に座席が決まっていないとワークショップなどに大きな支障が出てしまうリスクがあります。次に、席を決めないと同僚の中でも同じ部署や仲の良いもの動詞が固まり、集中力欠如や新たな示唆が得づらいセミナーになってしまいます。

最後に、全体的に変わり映えしない空間になってしまい、わざわざ開催のセミナーがもったいない時間となってしまいます。

こういった点から、ある程度意図をもって座席を決め、事前に誰がどこに座っているかを講師が把握し、セミナーの中でスムーズに指名して対話をする活気あるセミナーにするために必要な工夫です。

6,講義中はアドリブ重視

これも賛否両論あると思いますが、私はやっぱりアドリブ進行は全然ありだと感じています。講師として登壇する以上は台本通り進める意識は当然持ちつつ、当日の温度感、空気感に合わせて柔軟な進行になるようアドリブを重視します。

作られたフォーマット感は、やはりどうしてもやらされている感が出てしまうので、積極的な学習の機会ととらえる方が減り、セミナーの成果が最大化されないと感じます。


太田高寛

インナーブランディング施策としての教育は、現場に『やらされている感』を持たせたら失敗だと思っています。今回のセミナーでも『マーケティングを知れば自分の仕事が楽になる、成果が出る』と思ってもらう工夫を凝らしました。

7,最後に時間内でのアンケート実施

これも当たり前だと思われると思いますし実際にセミナーではよくあることですが、これが単純なアンケートの回収率を高める方法だけだと思っている方は少なくありません。

実際には、それ以外の副次効果が大事だったりします。インナーブランディングは一回のセミナーで終わるケースは少なく、基本的には継続的な活動です。そのため、アンケートをより多く回収したいのはもちろんのこと、時間がたてば徐々に温度感が覚めてしまうその前に、アンケート結果を踏まえた次のインナーブランディング施策を決めるのがとても重要です。

そのためには講義受講後のすぐの今最も記憶が残っている状態の受講者のリアルなアンケート内容や要望を取得することがキモであり、2,3日後に講義を振り返って書くアンケートでは得られない重要な情報が得られるのです。

これこそがその場でアンケートを回答させる一番の価値だと私は思っています。

実績と所感|インナーブランディングセミナー開催を経て見えた「組織の変化」の兆し

セミナー実施後、参加した営業社員からは「これまでWEB広告の仕組みをブラックボックスだと思っていたが、自分の商談と直結していることがわかった」「クライアントに対して、集客のフェーズから提案できる自信がついた」といった前向きなフィードバックを多数いただきました。

実際のアンケート結果でも高い満足を戴き、受講者からのポジティブなアンケート回答が「組織の変化」のきっかけになったかもしれないという確かな手ごたえにつながりました。

インナーブランディングセミナーのアンケート結果

当日のアンケート結果の一部

また、ご依頼主の部長様からも「部門間の共通言語ができたことで、今後の組織統合に向けた土台が整った」との評価をいただき、一つのセミナーが組織の方向性を揃える強力なインナーブランディング施策となることを再確認しました。


まとめ:一貫した顧客体験は「社内の連帯」から生まれる

WEBマーケティングは魔法ではありません。しかし、営業一人ひとりがその力を理解し、一貫した顧客体験を設計できるようになれば、組織の戦闘力は飛躍的に高まります。

「クロージング重視」から「パートナー型営業」への転換は、一朝一夕にはいきません。しかし、今回のような社員教育やワークショップを通じて、社員が「自社の価値」を再定義し続けることこそが、最強のインナーマーケティングとなります。

組織のマーケティング力向上に課題を感じている方は、まずは「社内の共通言語作り」から始めてみてはいかがでしょうか。


FAQ:よくある質問

Q
営業社員にマーケティングを教える際、最も反発される点はどこですか?

A

「自分たちの仕事が増えるのではないか」という懸念です。そのため、マーケティングを学ぶことが「商談の効率化(無駄な失注を減らすこと)」に直結することを伝えるのがコツです。

Q
50名規模のセミナーで、一方通行にならない工夫はありますか?

A

グループワークを多用し、現場の成功事例をその場で発表してもらう形式を採っています。現場の言葉で語られる成功体験が、最も周囲を動かします。

Q
セミナー後のフォローアップはどうすればいいですか?

A

ツール(TUNAG等)を活用して、学んだ内容を実践した事例を共有し合ったり、代表者による定例のフィードバック会を行うことで、知識の風化を防げます。

Q
会社の合併など、大きな変化がある時期に教育を行うのは負担ではないですか?

A

むしろ逆です。変化の時期こそ「新しい共通の価値観」が必要です。教育という名のインナーマーケティングが、組織のバラバラな方向性を一つにまとめます。

Q
ウェブマーケティングの知識が全くない社員でも大丈夫ですか?

A

大丈夫です。技術的な話よりも「顧客心理」や「価値提供の順番」という本質的な考え方から入るため、キャリアを問わず理解いただけます。


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