「マーケティング戦略を立てる」と言われても、何から手をつければいいか迷うWeb担当者の方は多いのではないでしょうか。市場の変化が激しい現代において、場当たり的な施策では成果を出すことが難しくなっています。成功のためには、明確な方向性を示す「ロードマップ」が不可欠です。

本コラムでは、企業のマーケティング担当者が抱える「何から始めればいいかわからない」という課題に対し、マーケティング戦略立案の全体像を段階的に解説します。戦略の全体像から具体的な立案手順、そして成果につなげるためのテンプレートまで、実践的なアプローチを網羅的にご紹介します。本記事で紹介するロードマップは、予算や専門知識に自信がない中小企業や地方企業でも活用できる内容になっています。ぜひ最後までお読みいただき、自社のマーケティングを次のステージに進めるための羅針盤としてご活用ください。

戦略と戦術の違い

マーケティング戦略を立てる上で、まず理解すべきは「戦略」と「戦術」の違いです。戦略とは、最終的なゴールを達成するための「全体的な計画」や「方向性」を指します。一方、戦術は、その戦略を実行するための「具体的な手段」や「個別の施策」のことです。

家を建てることに例えてみましょう。戦略は「どのような家を、どこに、誰のために建てるか」という設計図です。一方、戦術は「どの木材を使い、どんな釘を打ち、どの業者に依頼するか」という具体的な行動にあたります。優れた家を建てるには、まずしっかりとした設計図(戦略)が必要不可欠なのです。

この関係性を無視して、いきなり戦術(SNS広告やYouTube動画制作など)から入ってしまうと、場当たり的な施策に終わり、費用対効果の低い結果を招きがちです。「何のために、誰に、何を届けるのか」という戦略を明確にすることが、すべてのマーケティング活動の出発点となります。

戦略立案の5つの手順

現代のマーケティングは、単に「モノを売る」活動から、顧客や社会と共に価値を創造する「構想でありプロセス」へと進化しています。この複雑なプロセスを体系的に進めるためのロードマップを、ここでは5つのステップに分けて解説します。

① 環境分析を徹底する

マーケティング戦略立案の最初のステップは、自社を取り巻く環境を徹底的に理解することです。この段階で活用するのが、3C分析(Customer, Competitor, Company)です。市場全体を俯瞰し、客観的な事実に基づいて自社の立ち位置を把握します。

  • Customer(顧客・市場):市場規模、成長性、顧客のニーズやトレンドを分析します。ウェブサイトのアクセス解析を行うGoogleアナリティクス や、各種市場調査レポートを活用することで、客観的なデータを収集できます。
  • Competitor(競合):競合他社の製品、価格、流通、プロモーションを詳細に調査します。競合のウェブサイトやSNS、プレスリリースを定期的にチェックするだけでなく、実際に競合の商品・サービスを体験してみることも有効です。
  • Company(自社):自社の強み・弱み、リソース(資金、人材、技術など)、ブランド力などを客観的に評価します。
太田高寛

この段階で重要なのは、自社の強みを深く掘り下げることです。私たちは、WHO-WHATを緻密に行い、会社としての顧客価値を可視化する戦略設計ノウハウを持っています。自社では気づきにくい競争優位の源泉を特定し、後の戦略に活かすことが可能です。

② STP分析で戦略を策定

3C分析で得た情報をもとに、いよいよ戦略の骨格を組み立てます。ここで用いるのがSTP分析(Segmentation, Targeting, Positioning)です。

  • Segmentation(セグメンテーション):市場を顧客のニーズや属性、行動などに基づいて細かく分類します。
  • Targeting(ターゲティング):分類したセグメントの中から、自社が最も競争優位性を発揮できるターゲット顧客を特定します。
  • Positioning(ポジショニング):ターゲット顧客の心の中に、競合他社にはない独自の価値や立ち位置を確立します。ユニーク・セリング・プロポジション(USP)を明確にすることで、価格競争から脱却できます。

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の再建を指揮した森岡毅氏の事例は、このステップの重要性を物語っています。彼は莫大な設備投資に頼らず、顧客の「非日常的な体験」への潜在的なニーズを捉え、「エンターテイメントの本質」という独自のポジショニングを確立することで、年間集客数を大幅に伸ばしました。

太田高寛

ターゲティングが曖昧だと、その後の施策すべてがブレてしまいます。当社には、価値を顧客に届けるターゲティング設計ノウハウと経験があります。市場の本質を捉え、本当に響く相手に的確にメッセージを届けることで、限られた予算でも最大の効果を生み出します。

③ 4Pで施策を具体化

STP分析で定めた戦略を、具体的な実行プランに落とし込むのが4P戦略(Product, Price, Place, Promotion)です。このフレームワークは、デジタル時代においても「変わらない本質」として機能します。

  • Product(製品):ターゲットの課題を解決する商品やサービス、その特徴やデザインを設計します。
  • Price(価格):製品の価値と市場、競合を考慮して、最適な価格帯や料金体系を決定します。サブスクリプションモデルやフリーミアムモデルなども検討します。
  • Place(流通):顧客が最も効率よく製品を入手できる場所や方法を設計します。ECサイト、実店舗、オンラインとオフラインを融合させたOMO戦略など、多様な選択肢があります。
  • Promotion(販促):ターゲットに製品の価値を効果的に伝達するためのコミュニケーション活動を計画します。SNS広告、コンテンツマーケティング、メールマーケティングなど、多様なツールを組み合わせて活用します。

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④ KPI設定と実行

戦略と戦術が固まったら、次に重要なのが具体的な目標(KPI)の設定と実行です。KPI(Key Performance Indicator)は、戦略が計画通りに進んでいるかを測るための「中間指標」です。例えば、「ブランド認知度20%向上」「ウェブサイトのコンバージョン率3%達成」「新規リード獲得数月100件」といった具体的な数値を設定します。

KPIを設定することで、チーム全体が同じ目標に向かって進むことができ、戦略の進捗を客観的に評価できます。また、日々の業務が最終的なゴールにどう繋がっているか理解できるため、メンバーのモチベーション向上にも繋がります。

太田高寛

戦略実行には、部門間の連携が不可欠です。私たちは、戦略を実行する上での関係者との合意形成ノウハウと、現場と経営層の目線を合わせて組織としてマーケティング戦略を推進するプロジェクトマネジメントノウハウを持っています。これにより、戦略を「絵に描いた餅」で終わらせず、組織全体で実行する体制を構築します。

⑤ 評価と改善のサイクル

戦略は一度立てたら終わりではありません。市場、顧客、技術は絶えず変化しており、戦略もそれに合わせて柔軟に見直す必要があります。KPIを定期的にチェックし、計画とのズレが生じていないかを確認します。もし目標に届いていない場合は、その原因を分析し、戦術や、場合によっては戦略そのものを修正していきます。

この「実行→評価→改善」のサイクルを継続的に回すことこそが、デジタル時代のマーケティング成功の鍵となります。テクノロジーは、このサイクルをより高速で正確に回すための強力なツールです。例えば、BowNowのようなMA(マーケティングオートメーション)ツールや、ChatGPTのようなAIツールを活用することで、データ収集や分析、施策の自動化が劇的に効率化されます。

まとめ:戦略は継続的プロセス

マーケティング戦略立案は、単発的なイベントではなく、分析→戦略策定→実行→評価→改善という一連の継続的なプロセスです。このロードマップに沿って進めることで、中小企業や地方企業でも、限られたリソースの中で成果を出し、持続的な成長を実現できます。

しかし、実際の事業に落とし込むにはさらに詳細な分析や、戦略をチームで共有し、実行していくための具体的なロードマップが必要になります。TSRコンサルティングでは、お客様の事業特性に合わせたオーダーメイドの戦略策定を支援しています。もし、本記事を読んで「もっと深く学びたい」「自社の戦略をプロに相談したい」と思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。

よくあるご質問

マーケティング戦略はなぜ必要なのですか?

マーケティング戦略は、企業が進むべき方向を示す羅針盤のようなものです。戦略がなければ、個々のマーケティング活動(広告、SNS投稿など)がバラバラになり、一貫性が失われ、十分な成果を出すことができません。戦略を立てることで、リソースを最も効果的な活動に集中させることができ、長期的なブランド構築と事業成長に繋がります。

中小企業でも本格的な戦略は必要ですか?

はい、必要です。むしろ、大手企業よりも戦略が重要です。限られた予算や人材の中で大手と競争するには、やみくもに施策を打つのではなく、「市場の構造」を深く理解し、自社の強みを活かせるニッチな市場を狙う必要があります。森岡毅氏や赤城乳業の成功事例が示すように、優れた戦略思考は資金力を凌駕します。

マーケティング戦略のテンプレートはありますか?

はい、戦略立案には様々なテンプレートやフレームワーク(3C、STP、4P、SWOT分析など)が存在します。これらのテンプレートを活用することで、情報の抜け漏れを防ぎ、論理的に思考を進めることができます。しかし、テンプレートはあくまで思考を整理するツールであり、自社の事業や市場に合わせてカスタマイズすることが最も重要です。テンプレートに当てはめることだけが目的とならないように注意しましょう。