マーケティングの戦略事例と題して、世に出ている書籍などでも記されている戦略事例からTSRコンサルティングなだけの事例までまとめてお届けいたします。どうぞお付き合いください。

成功企業に学ぶマーケティング戦略の重要性

まず初めに「自社の戦略が本当に正しいのか?」と悩むとき、参考になるのは成功企業の具体的な事例です。マーケティング戦略は業種や規模によってアプローチが異なりますが、成功企業には共通する考え方やフレームワークの活用法があります。この記事では、日本を代表する企業の戦略を取り上げ、その成功要因を分解し、自社の戦略策定にどう応用できるのかを解説します。

事例①:USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)

一時は入場者数の低迷に悩んでいたUSJは、マーケター森岡毅氏の手腕で劇的なV字回復を遂げました。その戦略の鍵となったのが「ターゲットを絞ったSTP戦略」です。

当時のUSJは「映画ファン」という狭いターゲット層に依存していました。そこで「ファミリー層」「若い女性グループ」といった幅広い層に訴求するコンテンツ(ハリーポッターエリアやミニオンパークなど)を導入し、ターゲットごとに異なる体験価値を提供しました。

さらにプロモーション戦略(4PのP)も刷新。SNSを活用した体験共有を促し、「#USJ」投稿が拡散される仕組みを作ったことで、自然な口コミマーケティングが加速しました。結果、入場者数は右肩上がりに増加し、国内テーマパーク市場でディズニーと並ぶ存在へと成長しました。

運営者コメント: 「USJの事例は、ターゲティングとプロモーションを見直すだけで大きな成果が出ることを示しています。自社の商品やサービスも“誰に届けるのか”を再定義するだけで可能性が広がります。」

太田高寛

USJの事例は、ベターすぎて今は参考にできないという声も多く聞きますが私はそうは思いません。ターゲティングとプロモーションを見直すだけで大きな成果が出ることは間違いありません。自社の商品やサービスも“誰に届けるのか”を再定義するだけで可能性が広がります。

事例②:任天堂

任天堂は、常に革新的な戦略で世界市場をリードしてきました。その代表例が「Wii」の成功です。当時ゲーム業界では高性能化競争が主流でしたが、任天堂はあえて「ライトユーザー層をターゲットにしたSTP戦略」を採用しました。

「家族みんなで遊ぶ」「直感的に楽しめる」というポジショニングを打ち出し、シンプルな操作性のコントローラーを投入。これにより、従来ゲームに馴染みのなかった層を大量に市場に呼び込みました。

また、4Pの観点ではPriceを抑えつつ、PromotionでテレビCMと店頭体験を連動させることで、短期間で世界的なヒット商品に成長しました。結果、ゲーム業界全体に「ユーザー拡大戦略」という新たな潮流を生み出したのです。

事例③:無印良品(良品計画)

無印良品は「これがないと困る」というよりも、「これがあると暮らしが整う」という生活価値を提供することで支持を集めています。その戦略の肝は「ポジショニングの一貫性」です。

ブランド開始当初から「シンプルで低価格、高品質」という軸を貫き、商品デザインから店舗体験、広告に至るまで統一したメッセージを発信。これにより顧客の頭の中で「無印=シンプルで安心」という強固なブランド認知を構築しました。

近年はグローバル展開にも力を入れており、海外市場でも「日本らしいシンプルさ」を強みにポジショニングを行い、ローカル市場の競合と差別化しています。

運営者コメント: 「無印良品は“商品点数が多くてもブランドメッセージをぶらさない”戦略が特徴です。中小企業でも、自社の強みを一貫したメッセージに落とし込むことで顧客の信頼を獲得できます。」

太田高寛

無印良品は“商品点数が多くてもブランドメッセージをぶらさない”戦略が特徴です。中小企業であっても、自社の強みを一貫したメッセージに落とし込むことで顧客の信頼を獲得できます。

事例④:セブン-イレブン

セブン-イレブンはコンビニ業界のリーダーとして、他社との差別化を続けています。その戦略は「データ活用と商品開発の融合」です。購買データを詳細に分析し、地域ごと・時間帯ごとに商品を最適化。さらにPB(プライベートブランド)を積極展開し、「ここでしか買えない価値」を提供しています。

これは4PのProductとPlaceを強化した戦略であり、顧客がどの時間帯に来店しても欲しい商品が揃っている、という安心感を築いています。

事例⑤:大手IT人材派遣会社

ITエンジニア派遣会社として、再スタートした際に、他社との差別化、USPを再定義して事業価値を見直す価値再定義のプロジェクトを行いました。その結果導き出された戦略は「未経験でまだキャリアの野望が無い若手人材を採用し、特定の領域に専門特化した人材に育成し、大手のSierに派遣する」というものでした。採用データや派遣後の人材データを詳細に分析した結果、未経験からITエンジニアとして安定した職に就けるというキャリアの可能性を広く点に提供価値を見出し、それに合わせたWEB戦略を行いました

これはSTPから4Pを見直した結果導いた戦略であり、顧客がどういった人材を派遣してほしいかというニーズも加味した会社内の一貫した戦略を築いています。

太田高寛

この事例のように採用だけ、営業だけという部署単体の戦略ではなく、事業や企業全体を巻き込んで一貫したマーケティング戦略を作ろうとする思想が、企業の競争力をあげる最も大事なポイントであると思います。

事例から学べる共通点

これらの成功企業に共通しているのは、3C・STP・4Pを一貫したストーリーで繋げていることです。

  • USJ:3Cで市場の停滞を把握 → STPでターゲット拡大 → 4PでSNS中心のプロモーションを実行
  • 任天堂:3Cで競合の高性能化を把握 → STPでライト層にターゲット → 4Pで価格・体験を最適化
  • 無印良品:3Cで消費者の生活ニーズを把握 → STPで「シンプル志向」をターゲット → 4Pで商品から広告まで統一
  • セブン-イレブン:3Cで地域ごとのニーズを把握 → STPで「地域密着」のポジション → 4Pで商品展開と流通を強化

このように、フレームワークをバラバラに使うのではなく、連続性を持たせることで成果に直結するのです。

まとめ:事例を学び、自社戦略に応用する

企業の成功事例は、自社の戦略を磨く大きなヒントになります。ただし大切なのは「そのまま真似をすること」ではなく、「自社の強みや市場状況に合わせてアレンジすること」です。3C・STP・4Pの型に沿って事例を分析し、自社に合った戦略を組み立てていきましょう。

TSRコンサルティングでは、今回紹介したような国内外の事例を体系的にまとめた「マーケティング戦略事例集」を用意しています。より実務に役立つ形で学びたい方は、ぜひ資料をダウンロードしてご覧ください。