この記事でわかること
  • 公式発表や公的な事例集で確認できる、インナーブランディングの成功事例20社(大企業12社・中小企業8社)
  • 各社が「何を背景に」「どんな施策を」行ったのかという具体例
  • 施策のタイプ別に見た事例の整理(理念策定・対話・表彰・情報公開・社内メディアなど)
  • 成功企業に共通するパターンと、自社に応用するときの進め方

「インナーブランディングに取り組むことになったが、他社が実際に何をしているのかがわからない」「経営層に提案するために、参考になる事例を集めたい」。インナーブランディングを任された担当者からは、こうした声をよく聞きます。

ただ、ネット上の事例紹介は出典がはっきりしないものも少なくありません。提案資料に使うなら、元の情報にさかのぼれることが前提です。

そこでこの記事では、各社の公式サイト・統合報告書・公式発表、信頼できるメディアの記事、そして中小企業庁の白書や事例集で内容を確認できた20の事例に絞って紹介します。大企業だけでなく、従業員数十名規模の中小企業の事例も含めました。成果の数値は、出典に明記されているものだけを載せています。

後半では、20の事例に共通する成功パターンと、自社に応用するステップも整理しました。自社の次の一手を考える材料にしていただければと思います。


目次
  1. インナーブランディングの成功事例を読む前に押さえたい視点
  2. 大企業のインナーブランディング成功事例12選
    1. 1. 日本航空(JAL):部門の垣根を越えた「JALフィロソフィ勉強会」
    2. 2. オリエンタルランド:仲間同士で称え合う仕組みと感謝のイベント
    3. 3. 味の素:ASVを「自分ごと化」するマネジメントサイクル
    4. 4. ヤンマー:「HANASAKA」で“ヤンマーらしさ”を問い直す
    5. 5. ぺんてる:全世界の社員が参加した「PENTEL RAKUGAKI WEEK」
    6. 6. メルカリ:バリュー体現者を四半期ごとに表彰する「MVP制度」
    7. 7. 丸井グループ:自ら手を挙げて参加する「中期経営推進会議」
    8. 8. ソニー:社員の声を集めて定めた「Purpose(存在意義)」
    9. 9. 星野リゾート:情報公開とフラットな組織文化
    10. 10. スターバックス コーヒー ジャパン:ミッションを軸にした研修と対話
    11. 11. ユニ・チャーム:経営陣と現場が行き来する「共振の経営」
    12. 12. サイボウズ:理念への共感を前提にした採用
  3. 中小企業のインナーブランディング成功事例8選
    1. 13. 側島製罐(愛知県・金属製品製造業):全社員で約1年かけてMVVを策定
    2. 14. 共立理化学研究所(神奈川県・製造業):事業承継を機に企業理念を再構築
    3. 15. 常磐植物化学研究所(千葉県・化学工業):朝礼・研修・手帳で理念を日常に
    4. 16. 飯田工業薬品(静岡県・化学製品卸売業):理念の明文化と読み合わせ
    5. 17. 正栄産業(富山県・木造建築工事業):手帳型の経営計画書を毎年全員に配布
    6. 18. エスケイワード(愛知県・情報通信業):MVV策定と共感採用、ピアボーナス
    7. 19. えびの興産(大阪府・運輸業):全従業員との社長面談で声を施策に
    8. 20. 北三陸ファクトリー(岩手県・水産加工品の製造販売):代表のビジョン発信で共感する人材を集める
  4. 施策タイプ別に見るインナーブランディングの具体例
  5. 成功企業に共通する5つのパターン
    1. パターン1:理念づくりの段階から社員を巻き込んでいる
    2. パターン2:一度きりではなく「仕組み」として続けている
    3. パターン3:理念を「行動」に置き換えて見せている
    4. パターン4:経営と現場の距離を縮める工夫がある
    5. パターン5:人事制度や採用とつながっている
  6. 事例を自社に応用するための5ステップ
    1. 自社に合うインナーブランディングの進め方に迷ったら
  7. まとめ
  8. よくある質問
    1. インナーブランディングの成功事例は、中小企業でも参考になりますか?
    2. インナーブランディングの具体例には、どのような施策がありますか?
    3. 成果が出るまでにどのくらいの期間がかかりますか?
    4. 他社の成功事例をそのまま取り入れてもよいですか?
    5. 社内だけで進めるのが難しい場合はどうすればよいですか?
  9. 関連記事
  10. 参考情報

インナーブランディングの成功事例を読む前に押さえたい視点

事例は「施策の形」より「なぜそれをやったか」を読むと自社に活かしやすくなります。背景・施策・結果の3点で見るのがおすすめです。

インナーブランディングとは、企業の理念やビジョンを社員が理解・共感し、日々の仕事で体現できる状態をつくる取り組みです。対象が自社の社員なので、同じ施策でも組織の状態によって効き方が変わります。

事例は次の3点で読むと、自社との違いが見えやすくなります。

  • 背景・狙い:どんな課題や転機があって取り組んだのか
  • 施策:誰を対象に、どんな仕組みで、どれくらいの頻度で続けているのか
  • 結果:参加状況や業績などで、出典に明記されている変化は何か
太田高寛

事例集を読むと、つい形から入りたくなります。ただ、同じ施策でも会社の状態が違えば結果は変わります。まずは「この会社はなぜこれをやったのか」を読み取るところから始めてみてください。

大企業のインナーブランディング成功事例12選

大企業の事例は、理念を「一度伝えて終わり」にせず、勉強会・表彰・対話などの仕組みで繰り返し触れる機会をつくっている点が共通しています。

1. 日本航空(JAL):部門の垣根を越えた「JALフィロソフィ勉強会」

JALは企業理念の実現に向けて「JALフィロソフィ」を掲げ、その浸透と社員の自己成長を目的に、グループの翼を支える全員を対象とした「JALフィロソフィ勉強会」を年3回継続しています。特徴は部門横断で行う点で、運航乗務員、客室乗務員、整備士、空港スタッフ、営業など多様な職場からファシリテーターを選び、海外では現地のファシリテーターが進行します。2011年度からは「JALフィロソフィ発表大会」も毎年開催しています。

2. オリエンタルランド:仲間同士で称え合う仕組みと感謝のイベント

オリエンタルランドは、1984年に「コーテシーキャンペーン」として始まった取り組みを、2022年から年間を通したプログラム「マジカルディズニーキャスト」に発展させました。キャスト同士が仲間のすばらしい行動を専用カードに書いて称え合う仕組みで、2024年度の受賞者は525名と公表されています。年1回、閉園後のパークで開く感謝イベント「サンクスデー」には、2024年度に準社員・出演者19,420名が参加し、役員・管理職・社員1,714名がもてなす側に回りました。

3. 味の素:ASVを「自分ごと化」するマネジメントサイクル

味の素グループは「ASV(Ajinomoto Group Shared Value)」を掲げ、2020年から「ASV自分ごと化」を軸にエンゲージメントを高めるマネジメントサイクルを回しています。CEOや部門長と社員との対話、組織目標とつながった個人目標の設定と発表、ASVを体現した事例を表彰する「ASVアワード」を行い、年1回のエンゲージメントサーベイで「自分ごと化」の度合いを測って翌年の計画に反映しています。

4. ヤンマー:「HANASAKA」で“ヤンマーらしさ”を問い直す

ヤンマーは2012年に「プレミアムブランドプロジェクト」を始めましたが、“ヤンマーらしさ”の掘り下げが十分でなかったとして、創業時からの「人の可能性を信じ、挑戦を後押しする」価値観を「HANASAKA」として改めて打ち出しました。社員の自発性を引き出すことを狙い、日本・アメリカ・シンガポール・オランダ・中国の5カ所でワークショップを実施し、これまで16カ国・86名がアンバサダーとして参加。四半期に1回発行の冊子「HANASAKA BOOK」や従業員向けアプリも用意しています。

5. ぺんてる:全世界の社員が参加した「PENTEL RAKUGAKI WEEK」

ぺんてるは「正解からはみだそう。表現するよろこびをはぐくむために。」というブランドメッセージを掲げています。このメッセージを社員自身が体験する場が「PENTEL RAKUGAKI WEEK」で、全世界のぺんてる社員・従業員3,046人が自社の「表現する道具」で巨大な帆布にRAKUGAKIをしました。

6. メルカリ:バリュー体現者を四半期ごとに表彰する「MVP制度」

メルカリは「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」の3つのバリューを掲げています(2016年の公式ブログ掲載時点)。このバリューを体現したメンバーを四半期ごとに表彰するのが「MVP制度」で、バリューごとの賞に加え、3つを兼ね備えたメンバーにMVPが贈られます。

7. 丸井グループ:自ら手を挙げて参加する「中期経営推進会議」

丸井グループは「人の成長=企業の成長」という考えのもと、全社員が「自ら手を挙げる」公募制で参加できる場をつくっています。代表的な中期経営推進会議は、2016年1月から、幹部に限らず参加意思を示した社員が加わる形に変わりました。ほぼ毎月開かれ、毎回約1,000名の応募があるとされます。2023年3月期には、グループ全社員の約91%にあたる4,359名が自ら参加意思を示し、さまざまなプロジェクトや会議に参加しました。

8. ソニー:社員の声を集めて定めた「Purpose(存在意義)」

ソニーは2019年1月、存在意義(Purpose)として「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」を発表しました。報道によると、吉田憲一郎社長(当時)は社員が同じ方向で仕事に取り組めるよう、海外を含む社員の意見を聞いてPurposeと価値観を再定義しており、2018年7月から半年以上をかけて社員の声を集めたとされています。

9. 星野リゾート:情報公開とフラットな組織文化

星野リゾートの星野佳路代表は、フラットな組織文化を競争力の源泉と位置づけています。インタビューでは、スタッフが支配人と対等に議論できるよう、財務諸表や顧客満足度調査を全員が同時に手に入れられるようにしたこと、社内ブログで定期的に「倒産確率」を投稿したところ反響が大きく増えたことを語っています。役職で呼び合うことをやめる、総支配人も含めてフリーアドレスにするなど、立場の差を感じさせない工夫も重ねています。

10. スターバックス コーヒー ジャパン:ミッションを軸にした研修と対話

スターバックス コーヒー ジャパンは、「Our Mission, Promises and Values」をベースに職場環境をつくっていると説明しています。新卒社員には入社時研修に加え、入社6カ月後と1年後にフォローアップ研修を行い、自己内省や同期との対話の場を設けています。評価・人材開発でも、パートナー(従業員)とリーダーの対話をベースに個人と会社の目標をすり合わせており、理念を研修や評価の場面に組み込んでいます。

11. ユニ・チャーム:経営陣と現場が行き来する「共振の経営」

ユニ・チャームは、経営陣が現場の生の情報に触れ、社員は経営陣の視点・視座・時間軸を学ぶ「共振の経営」を掲げ、目的や目標の共有による一体感の醸成を目指しています。行動面では2003年から社員一人ひとりがPDCAを主体的に回す「SAPS経営モデル」を運用し、2019年にはその進化版として「OODA-Loop」メソッドを導入しました。

12. サイボウズ:理念への共感を前提にした採用

サイボウズは「チームワークあふれる社会をつくる」という理念を掲げ、「理想への共感」「多様な個性を重視」「公明正大と自主自律」などを大切にしています。採用では「マッチング」を最も大切にし、その前提として「全員が同じ理想に共感しているという前提が欠かせません」と明言しています。採用の段階から設計している点が参考になります。

太田高寛

大企業の事例を並べてみると、派手なイベントよりも「毎年」「毎月」「四半期ごと」と続けている仕組みのほうが目立ちます。理念に触れる機会を日常にどう埋め込むかが勝負どころだと感じます。

中小企業のインナーブランディング成功事例8選

中小企業の事例では、業績悪化や事業承継などの転機に、経営者と社員が対話しながら理念をつくり直し、手帳や朝礼など身近な手段で浸透させています。

ここで紹介する8社は、いずれも中小企業庁の「中小企業白書」や「中小企業・小規模事業者の人材活用事例集」に掲載されている事例です。なお、紹介する売上や離職率の変化は、事業や働き方の見直しなども含めた結果である点に注意してください。

13. 側島製罐(愛知県・金属製品製造業):全社員で約1年かけてMVVを策定

1906年創業の側島製罐(従業員43名)は、2000年以降減収が続き、2020年12月期に過去最低の売上を記録していました。2020年に入社した石川貴也代表は、社員間の雰囲気が悪く、経営理念もないことを課題と捉え、全社員を巻き込んで約1年かけてMVVを策定。「社員の想いと策定過程にこそMVVの価値がある」としてオーナーシップを社員に任せ、その後は自律型組織づくりも進めました。2025年版中小企業白書によると、売上高は20年ぶりに増収に転じ、その後3年連続で増収を達成。従業員エンゲージメントの向上も報告されています。

14. 共立理化学研究所(神奈川県・製造業):事業承継を機に企業理念を再構築

水質の簡易分析機器などを手がける共立理化学研究所(従業員50名)は、硬直化した組織体質では市場の変化に対応できないとして、事業承継を機に経営層と社員が対話を重ねて企業理念を再構築しました。「誰でもどこでもできる水質の簡易分析技術の開発と提供」を不変の使命として明文化し、水のイラストを添えています。2022年版中小企業白書では、2020年に新サービスを開発し、最終ユーザーとつながって顧客ニーズを把握する機会が生まれたことが紹介されています。

15. 常磐植物化学研究所(千葉県・化学工業):朝礼・研修・手帳で理念を日常に

常磐植物化学研究所(従業員120名)は、売上高が40億円から24億円に減少する経営危機のなかで「世のため人のため」というアイデンティティの喪失を実感し、創業時の原点に立ち返って「価値の創造」「技術」「社会貢献」を柱に経営理念を再構築しました。毎月の朝礼での経営者メッセージ、年次の経営理念研修、「トキワ手帳」の配布で浸透を図り、白書では2022年3月期の売上高が40億円まで回復する見込みと記載されています。

16. 飯田工業薬品(静岡県・化学製品卸売業):理念の明文化と読み合わせ

飯田工業薬品(従業員31名)は、市場縮小のなかで顧客の企業価値を高められる企業への転換を目指し、「顧客本位」「独自能力」「社会との共生」を明文化した経営理念・ビジョン・ミッションを策定しました。社員手帳への明記や、朝礼・全体会議での読み合わせを徹底しています。理念に基づいて始めたPS灰のリサイクル事業は、売上の10%を占める柱に育ったと白書で紹介されています。

17. 正栄産業(富山県・木造建築工事業):手帳型の経営計画書を毎年全員に配布

正栄産業(従業員150名)は、事業拡大や多角化に伴い、団結力を高めて従業員と目線を合わせる必要を感じ、目標・行動指針・財務諸表・投資計画などを載せた手帳型の経営計画書を毎年全従業員に配布しています。内容はトップダウンとボトムアップの両方で更新。白書によると、2010年に作成を始めてから2021年までに売上高は2倍に増えたとされています。

18. エスケイワード(愛知県・情報通信業):MVV策定と共感採用、ピアボーナス

Webサイト構築や多言語翻訳などを手がけるエスケイワード(従業員69人)は、ミッション・ビジョン・バリューを策定し、共感する人材を採用することで入社後のミスマッチを減らしています。入社後も1対1で会話する機会を設け、ピアボーナスで業務以外の貢献を見える化しています。中小企業庁の事例集では、入社後のギャップが少ないことから離職率が低下したこと、2019年に対して2022年は売上が16%増加したことが紹介されています。

19. えびの興産(大阪府・運輸業):全従業員との社長面談で声を施策に

えびの興産(従業員88人)は、ドライバーの定着率の低さや高齢化に危機感を持ち、従業員の提案で人事グループを立ち上げました。特徴的なのは、従業員全員に年2回の社長面談を行い、本人の要望、周りの声をもとにした要望、社長への要望を聞いて具体的な施策に活かしている点です。事例集では、2022年の離職率が2019年との差で約10%低下したことが紹介されています。

20. 北三陸ファクトリー(岩手県・水産加工品の製造販売):代表のビジョン発信で共感する人材を集める

北三陸ファクトリー(従業員30人)は、「地元である北三陸の産品をブランド化し、地域と水産業に活気を取り戻すこと」をビジョンに掲げています。代表がこのビジョンを積極的に発信して共感する人材を引き寄せ、経営戦略・財務・商品開発では副業・兼業のプロ人材も活用しています。

太田高寛

中小企業の事例は、大がかりなツールよりも手帳や朝礼、面談といった手の届く手段が中心です。ツールはあくまで箱で、大事なのは中身。経営者と社員の距離が近い中小企業だからこそ、対話の質がそのまま浸透度に表れると感じています。

施策タイプ別に見るインナーブランディングの具体例

20の事例の施策は、大きく6つのタイプに分けられます。自社の課題に近いタイプから参考にすると、検討の範囲を絞り込めます。

同じ「インナーブランディング」でも、各社が力を入れているポイントはさまざまです。紹介した事例を施策のタイプ別に整理すると、次のようになります。

施策タイプ具体例該当する事例
理念・MVVの策定や再構築社員を巻き込んだ策定、原点回帰による再定義ソニー、ヤンマー、側島製罐、共立理化学研究所、常磐植物化学研究所、飯田工業薬品、エスケイワード
対話・参加の場づくり勉強会、ワークショップ、手挙げ式の会議、トップとの対話JAL、ヤンマー、丸井グループ、味の素、ユニ・チャーム、えびの興産
称賛・表彰の仕組み仲間同士のカード、四半期表彰、アワード、ピアボーナスオリエンタルランド、メルカリ、味の素、エスケイワード
体験型イベント全社員参加の企画、感謝イベント、発表大会ぺんてる、オリエンタルランド、JAL
情報公開・社内メディア財務情報の共有、社内ブログ、冊子・アプリ、手帳星野リゾート、ヤンマー、常磐植物化学研究所、正栄産業
人事制度・採用との連動理念に基づく採用、研修、評価・目標設定サイボウズ、スターバックス、味の素、側島製罐、エスケイワード

成果が報告されている企業の多くは、味の素やエスケイワードのように複数のタイプを組み合わせています。単発の施策より、理念に触れる接点を複数つくることがポイントといえそうです。

太田高寛

施策を選ぶときは、社員を「社内顧客」と捉えてみると考えやすくなります。何を求めているかをリサーチしてから施策を打つのは、お客様向けのマーケティングと同じ順番です。

成功企業に共通する5つのパターン

規模や業種は違っても、成功事例には「社員を巻き込む」「続ける仕組みにする」「行動で見せる」など、共通するパターンが見られます。

パターン1:理念づくりの段階から社員を巻き込んでいる

ソニーは社員の声を集めてPurposeを定め、側島製罐は全社員でMVVを策定しました。完成した言葉を配るより、つくる過程に関わってもらうほうが「自分たちの言葉」になりやすくなります。

パターン2:一度きりではなく「仕組み」として続けている

JALの勉強会は年3回、丸井グループの会議はほぼ毎月、メルカリの表彰は四半期ごとと、多くの事例で頻度が決まっています。担当者が替わっても回り続ける仕組みにしているかが分かれ目です。

パターン3:理念を「行動」に置き換えて見せている

オリエンタルランドの称賛カードやメルカリのMVP制度は、理念を体現した具体的な行動を称える仕組みです。身近な仲間の行動として示すことで、抽象的な言葉が「明日からの行動」に変わります。

パターン4:経営と現場の距離を縮める工夫がある

ユニ・チャームの「共振の経営」、星野リゾートの情報公開、えびの興産の全員面談は、いずれも経営と現場の情報や視点の差を埋める取り組みです。理念浸透が進まない背景には、この差があることが少なくありません。

パターン5:人事制度や採用とつながっている

サイボウズやエスケイワードは理念への共感を採用の軸にし、味の素やスターバックスは目標設定の対話に理念を組み込んでいます。理念と評価・採用がちぐはぐだと、社員は「評価されるのは別のこと」と受け取ってしまいます。

太田高寛

個人的に一番大事だと思うのは「経営と現場の距離」です。どれだけ良い言葉を掲げても、現場から見て経営の言動とずれていれば信頼されません。インナーとアウターは地続きで、社内で信じられていない言葉は社外にも届きにくいものです。

事例を自社に応用するための5ステップ

事例を応用するときは、施策選びの前に現状把握と目的の整理を行い、小さく始めて検証しながら仕組み化していく流れが現実的です。

  1. 社内の現状を把握する:アンケートやヒアリングで、理念の認知・共感の度合いや部門間の課題を確かめます。まず声を聞くことが出発点です。
  2. 目的と「ありたい状態」を言葉にする:離職を減らしたいのか、部門間の連携を強めたいのか。目的によって参考にすべき事例は変わります。
  3. 理念・MVVを見直す(必要な場合):理念がない、または事業と合っていない場合は、社員と対話しながら再構築します。
  4. 課題に合う施策を小さく試す:課題に近い施策タイプを選び、一部の部署や期間で試して反応を見ながら調整します。
  5. 仕組み化して効果を測る:頻度や担当を決めて継続できる形にし、サーベイなどで変化を測って次の計画に反映します。
太田高寛

最初の「現状把握」を飛ばしてしまうケースは少なくありません。社内の人だけで振り返ると、どうしても見慣れた前提にとらわれます。課題の見立てが変われば、選ぶべき事例も施策も変わるので、ここには時間をかけてよいと思います。

自社に合うインナーブランディングの進め方に迷ったら

TSRコンサルティングでは、一枚岩の組織づくりや組織間コミュニケーションの課題解決に向けたインナーブランディング支援を行っています。まず社内課題を客観的に把握して原因と仮説を整理する【診断】から、プランニングから実行まで伴走する【助言・推進支援】まで対応します。社内だけでは見えにくい課題を外部の視点で整理したい場合は、お気軽にご相談ください(料金は月5万円〜・税抜)。

まとめ

  • 公式情報や中小企業庁の資料で確認できた20の事例を見ると、大企業・中小企業を問わず、理念に触れる機会を「仕組み」として続けている点が共通しています。
  • 成功企業には、社員を巻き込んだ理念づくり、行動での可視化、経営と現場の距離を縮める工夫、人事制度・採用との連動といったパターンが見られます。
  • 事例を応用する際は、施策の形をまねる前に、自社の現状把握と目的の整理から始めるのが近道です。

よくある質問

インナーブランディングの成功事例は、中小企業でも参考になりますか?

参考になります。中小企業庁の白書や事例集には、従業員数十名規模で理念を再構築し、手帳や朝礼、面談などで浸透させた事例が掲載されています。大企業の事例も「なぜ・どう続けたか」に注目すれば応用できます。

インナーブランディングの具体例には、どのような施策がありますか?

理念・MVVの策定、勉強会やワークショップ、仲間同士の称賛カードや表彰制度、全社員参加のイベント、社内ブログや冊子による情報発信、理念に基づく採用・評価などがあります。成功事例の多くは、これらを複数組み合わせて継続しています。

成果が出るまでにどのくらいの期間がかかりますか?

企業の状況や目的によって異なり、一概にはいえません。紹介した事例でも、MVVの策定だけで約1年かけたケースや、10年以上継続している取り組みがあります。短期の数値だけで判断せず、継続できる仕組みを前提に計画するのが現実的です。

他社の成功事例をそのまま取り入れてもよいですか?

形だけを取り入れるのはおすすめしません。施策が機能した背景には各社の理念や組織の状態があります。自社の課題と目的を整理したうえで、近い事例の考え方を借りて調整するのがおすすめです。

社内だけで進めるのが難しい場合はどうすればよいですか?

社内だけで課題を振り返るとバイアスがかかり、原因を客観視しにくいことがあります。その場合は外部の視点を取り入れるのも一つの方法です。TSRコンサルティングでも、課題の診断から施策の推進まで伴走する支援を行っています。

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