- インナーブランディングの目的を6つの類型で整理し、自社に当てはまるものを選ぶ考え方
- 目的ごとに見るべき指標(先行指標・結果指標)と向いている施策の対応表
- 経営課題から逆算して目的を決め、1文で言語化するまでの手順
- 経営層と目的を合意し、KPIと施策に落とし込むときの確認ポイント
- 目的設定でよくある失敗と、その避け方
「インナーブランディングを進めてほしい」と任されたものの、何のためにやるのかがはっきりしないまま企画書を書き始めてしまった、という担当者の方は少なくありません。一般論としての目的は「理念浸透」「エンゲージメント向上」「離職防止」などとよく紹介されますが、それをそのまま自社の企画書に書いても、経営層からは「それで、うちの何が良くなるのか」と問われ、現場からは「また本社の取り組みか」と受け止められがちです。
インナーブランディングの成否は、施策の出来よりも手前の「目的をどう決めたか」で大きく左右されます。目的が具体的であれば、追うべき指標も、選ぶべき施策も、予算の妥当性も自然と説明しやすくなります。逆に目的があいまいなままだと、社内報やイベントを実施したこと自体が成果のように扱われ、1年後に「結局何が変わったのか」を説明できなくなります。
この記事では定義の解説は最小限にとどめ、実務担当者が自社の目的を決め、言葉にし、経営と合意し、KPIと施策に落とし込むまでの進め方を、対応表や目的文の例を交えて整理します。
インナーブランディングの目的は「自社の経営課題」から決める
インナーブランディングの目的は、一般論ではなく自社の経営課題を起点に、目指す社員の状態として決めることが大切です。
インナーブランディングとは、企業の理念やビジョン、ブランドの価値を社員に浸透させ、日々の判断や行動に反映される状態をつくる社内向けの取り組みです。定義や一般的な目的・効果、アウターブランディングとの違いについては、インナーブランディングとは?定義・目的・効果を初心者向けに徹底解説で詳しくまとめています。本記事はその次の段階として、「自社ではどの目的を掲げるべきか」を決める実務に焦点を当てます。
一般的な目的をそのまま掲げると何が起きるか
「理念を浸透させる」「エンゲージメントを高める」は間違いではありませんが、どの会社にも当てはまる言葉は自社の状況を何も説明していません。その結果、次のようなことが起こりやすくなります。
- 経営層が期待している成果(採用、営業成果、組織統合など)と、担当者が想定している成果がずれたまま進む
- 測る指標が決まらず、施策を実施した回数や参加者数だけが報告される
- 施策の選び方に根拠がなく、他社でうまくいった施策を真似ることになる
- 予算見直しの時期に、継続する理由を説明できない
目的は「手段」ではなく「状態」で書く
「MVVを策定する」「社内報を創刊する」「全社イベントを開く」は手段であり、目的ではありません。目的は「社員がどのような状態になり、それが経営上の何につながるのか」という形で書きます。たとえば「全社イベントを開く」ではなく、「各部門の社員が他部門の役割と自社の顧客価値を説明できる状態にし、部門間の引き継ぎで起きている取りこぼしを減らす」といった書き方です。
経済産業省が2022年に公表した「人材版伊藤レポート2.0」でも、経営戦略と人材戦略を連動させることの重要性が背景として挙げられ、有効な打ち手は事業内容や置かれた環境によって異なるとされています。インナーブランディングも同じで、正解の目的が外にあるわけではなく、自社の戦略と課題から導き出すものだと考えるのが自然です。

目的を決める打ち合わせで「何のためにやるんでしたっけ」という問いに、人によって違う答えが返ってくることはよくあると感じています。それ自体は悪いことではなく、ずれが見えた時点がスタートラインだと思います。最初に時間をかけて目的をそろえておくと、後の施策選びがずっと楽になります。
インナーブランディングの目的は6つの類型に整理できる
自社の目的を考えるときは、代表的な6つの類型から近いものを選び、自社の言葉に置き換えると整理しやすくなります。
目的は会社ごとに異なりますが、出発点となる課題のパターンはある程度限られています。実務で扱いやすいよう6つの類型に分けて整理します。
| 類型 | 主な背景・課題 | 目指す社員の状態 |
|---|---|---|
| ①理念・方向性の統一 | 理念やビジョンはあるが判断基準として使われていない/拠点や部門ごとに考え方がばらばら | 迷ったときに理念やバリューを判断の拠り所にできる |
| ②エンゲージメント・定着 | 若手や中堅の離職が続く/仕事の意味を感じにくいという声がある | 自社で働く意味を自分の言葉で語れ、主体的に貢献しようとする |
| ③部門間連携・マーケティング思考の共有 | 縦割りが進み連携が取れない/営業がマーケティングを理解しておらずリードが成約につながらない | 他部門の役割と顧客への提供価値を理解し、同じ顧客像で動ける |
| ④顧客接点でのブランド体現 | 社員によって対応の質や伝える内容にばらつきがある | 自社らしい対応が何かを理解し、顧客接点で一貫して示せる |
| ⑤採用・対外発信の強化 | 採用で自社の魅力をうまく伝えられない/入社後のギャップがある | 社員が自社の価値を自然に語り、採用や発信の担い手になれる |
| ⑥変革期の統合 | 合併・事業転換・リブランディング・経営交代などで組織の前提が変わる | 変化の理由と新しい方向性を理解し、新しい行動に移れる |
類型は1つに絞るのが基本
多くの会社では、複数の類型に当てはまる課題を抱えています。ただ、最初から6つすべてを目的に掲げると、指標も施策も散らばってしまいます。まずは「今いちばん経営に影響している課題はどれか」で主目的を1つ決め、必要に応じて副目的を1つ添える程度にとどめるのが現実的です。
類型どうしの関係も意識する
②の定着や⑤の採用は①の方向性が共有されていないと効果が出にくく、③の部門間連携も顧客への提供価値がそろっていることが前提になります。主目的を決めたら、その前提が満たされているかも確認しておくと、着手の順番を誤りにくくなります。

私自身はマーケティングの立場から組織を見ることが多いので、③の部門間連携、特に営業とマーケティングのずれには目が向きやすいと感じています。表向きは理念浸透の話でも、掘り下げていくと「同じ顧客を見ていない」ことが本当の課題だった、ということもあり得ると思います。類型はあくまで入口として使うのがよいと思います。
目的別に見るべき指標と向いている施策の対応表
目的が決まれば、追うべき指標と向いている施策もおおむね決まります。対応表を使い、目的と指標・施策のずれを防ぎましょう。
インナーブランディングの指標は、施策の結果すぐに動く「先行指標」と、時間をかけて経営成果として表れる「結果指標」に分けて考えると扱いやすくなります。結果指標だけを追うと半年から1年は変化が見えず、先行指標だけを追うと経営成果との関係が説明できません。両方を組み合わせて置くのが基本です。
| 目的の類型 | 先行指標の例 | 結果指標の例 | 向いている施策の例 |
|---|---|---|---|
| ①理念・方向性の統一 | 理念・バリューの認知度、内容を説明できる社員の割合、日常業務との結びつきを感じる割合(サーベイ) | 意思決定の迅速さに関する管理職の評価、部門をまたぐ判断のぶれの減少 | トップメッセージ、理念を題材にした対話会、バリューに沿った行動の共有・表彰 |
| ②エンゲージメント・定着 | エンゲージメントサーベイのスコア、仕事のやりがい・成長実感に関する設問 | 離職率(特に若手・中堅)、自己都合退職の理由の変化、社員紹介による応募数 | 1on1や上司との対話の仕組み、キャリアと理念をつなぐ研修、社内の称賛の仕組み |
| ③部門間連携・マーケティング思考の共有 | 他部門の役割の理解度、共通の顧客像・用語の認知度、部門横断の会議や連絡の頻度 | リードから商談・受注への移行率、引き継ぎ時の差し戻しや取りこぼしの件数 | 部門合同の勉強会、顧客像や提供価値を言語化するワークショップ、共通の報告フォーマット |
| ④顧客接点でのブランド体現 | 自社らしい対応の基準を理解している割合、行動指針に沿った事例の共有件数 | 顧客満足度や推奨度、問い合わせ・クレームの内容の変化 | 行動指針(クレド)の作成と運用、好事例の共有、ロールプレイ型の研修 |
| ⑤採用・対外発信の強化 | 自社の魅力を自分の言葉で説明できる社員の割合、発信への協力意向 | 応募数・内定承諾率、入社後早期の離職率、社員紹介経由の採用数 | 社員インタビューの制作、採用メッセージを社員と一緒に作る場、発信ガイドの整備 |
| ⑥変革期の統合 | 変化の理由を理解している割合、新方針への納得度、不安に関する設問 | 新体制下での離職率、統合後の部門間の協働案件数、新しい業務プロセスの定着度 | 経営層による説明会と質疑、変化の背景を伝える社内コンテンツ、現場リーダーとの対話 |
表の指標は例であり、すべてを測る必要はありません。主目的に対して先行指標を2〜3個、結果指標を1〜2個程度に絞ると、測定の負担が現実的な範囲に収まります。サーベイを使う場合は、まず「何を知りたいか」を設問レベルで決めてからツールを選ぶのがおすすめです。ツールの比較はエンゲージメントサーベイツールの比較記事も参考にしてください。
施策は目的から逆算して選ぶ
施策の一覧から「良さそうなもの」を選ぶと、目的とのつながりを説明できなくなります。目的→目指す状態→指標→施策の順で考えると、選んだ理由を経営層にも現場にも説明しやすくなります。施策ごとの特徴や選び方はインナーブランディング施策15選で整理しています。

指標の話になると、どうしても測りやすいものに寄っていきがちだと感じています。参加者数や閲覧数は測りやすい一方で、それだけでは目的に近づいたかは分かりません。測りにくくても目的に近い指標を1つは残しておくことが、後で振り返るときに効いてくると思います。
自社のインナーブランディングの目的を決める5つの手順
目的は、経営課題の確認、現状把握、類型の選択、目的文の作成、指標と期間の設定という順で決めると無理がありません。
ここでは、担当者が実際に目的を決めるときの流れを5つの手順に分けて紹介します。インナーブランディング全体の進め方(企画から評価まで)はインナーブランディングの進め方ロードマップで扱っているため、ここでは最初の「目的を決める」部分に絞ります。
- 経営課題を確認する:中期経営計画や年度方針、経営層の発言から、今会社が重視している課題を書き出します。インナーブランディングの言葉に置き換える前に、まず経営の言葉のまま並べることがポイントです。
- 社員の現状を把握する:既存のサーベイ結果、退職者の声、部門長へのヒアリング、少人数のインタビューなどから、経営課題の背景にある社員の状態を確認します。社内だけでは見えにくい場合は、第三者の視点を入れるのも一つの方法です。
- 目的の類型を選ぶ:前述の6類型のうち、経営課題と社員の現状を最もよく結びつけるものを主目的として1つ選びます。必要なら副目的を1つ加えます。
- 目的文を作る:選んだ類型を、自社の固有名詞や具体的な対象を入れた1文にします。書き方は次の見出しで詳しく説明します。
- 指標と期間を決める:先行指標と結果指標を選び、現状値を測ったうえで、いつまでにどの程度の変化を目指すかを決めます。現状値が分からない場合は、最初の測定そのものを最初のマイルストーンにします。
ヒアリングで聞いておきたいこと
手順1と2では、経営層と現場の両方に話を聞くことが欠かせません。対象ごとに聞いておきたいことは次のとおりです。
| 対象 | 聞いておきたいこと | 目的設定への活かし方 |
|---|---|---|
| 経営層 | 変わってほしい社員の行動、3年後に目指す会社の姿、今の組織に感じている不安 | 主目的の候補と、結果指標の方向性を決める |
| 部門長・管理職 | 部下の判断で迷いが出やすい場面、他部門との連携で詰まる点 | 目指す状態を具体的な行動レベルに落とす |
| 現場の社員 | 仕事のやりがいを感じる瞬間、会社の方針で分かりにくい点 | 先行指標の設問や、施策の受け止められ方を予測する |

現状把握の段階で、社内の方だけでは聞きにくいこと、言いにくいことがあるのは自然なことだと思います。当社の支援でも、最初の診断で課題を客観的に整理し直すことを大事にしています。原因の仮説が立つと、目的の言葉も自然と具体的になっていくと感じています。
インナーブランディングの目的を言語化する書き方
目的文は「誰が」「どんな状態に」「それによって何が良くなるか」「いつまでに」の4要素を入れた1文にまとめると伝わります。
類型を選んだだけでは、まだ社内で共有できる目的にはなっていません。誰が読んでも同じ意味に受け取れるよう、1文の目的文にまとめます。
目的文の基本フォーマット
おすすめは次の形です。「(いつまでに)、(対象の社員)が(目指す状態)になることで、(経営上の成果)につなげる」。長くなりすぎる場合は、目的文とは別に「背景」「対象範囲」「やらないこと」を補足として添えます。
良い目的文と見直したい目的文の例
以下は書き方を説明するための架空の例です。自社の状況に合わせて言葉を置き換えてください。
| 見直したい書き方 | 見直しのポイント | 改善した書き方の例 |
|---|---|---|
| 理念を社内に浸透させる | 誰がどんな状態になるのか、何のためかが不明 | 来年度末までに、全拠点の管理職が自社のバリューを使って部下の判断を説明できる状態にし、拠点ごとの対応のばらつきを減らす |
| 社員のエンゲージメントを高める | 対象と経営上の成果が不明 | 2年以内に、入社3年目までの社員が自分の仕事と顧客価値のつながりを実感できる状態にし、若手の早期離職を減らす |
| 全社イベントを成功させる | 手段が目的になっている | 今期中に、営業・マーケティング・カスタマーサポートの3部門が同じ顧客像と用語で話せる状態にし、商談化までの取りこぼしを減らす |
| ブランド力を強化する | 社内外のどちらの話か、何を変えるのかが不明 | 1年以内に、顧客接点のある社員が自社らしい対応の基準を理解し実践できる状態にし、顧客満足度の改善につなげる |
「やらないこと」も書いておく
「今回は人事評価制度の改定は扱わない」「海外拠点は第2フェーズとする」など、対象外とすることを明記しておくと期待のずれを防げます。関係者が多く期待が膨らみやすいテーマなので、範囲を絞ること自体が目的を守ることにつながります。

目的文は、きれいに書くことより、関係者が読んで同じ場面を思い浮かべられるかが大事だと思います。一度書いたら、経営層と現場の何人かに「これを読んでどんな状態を想像しますか」と聞いてみると、言葉のずれに早めに気づけます。
経営層とインナーブランディングの目的を合意する進め方
経営層とは目的文だけでなく、経営課題とのつながり、測り方、期間、見直しの基準まで合意しておくことが重要です。
目的を担当者だけで決めて走り出すと、経営層の関心が変わったときに取り組み全体が止まってしまいます。成果が出るまで時間がかかるからこそ、最初に「何をもって前進とみなすか」を合意しておくことが継続の条件になります。
合意の場で確認したい項目
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 経営課題とのつながり | 目的が中期経営計画や年度方針のどの課題に対応しているか |
| 目的文 | 対象・目指す状態・経営上の成果・期間が、経営層の認識と一致しているか |
| 指標と測り方 | 先行指標と結果指標、測定の方法と頻度、現状値の有無 |
| 期間と途中確認 | 全体の期間と、途中で進捗を確認するタイミング(四半期ごとなど) |
| 経営層の役割 | トップメッセージの発信や説明会への登壇など、経営層自身が担うこと |
| 予算と体制 | 社内の推進体制、関係部門の協力範囲、外部の力を借りるかどうか |
| 見直しの基準 | どのような状況になったら目的や施策を見直すか |
経営層に伝わりやすい説明の順番
経営層への説明は「経営課題→社員の現状→目的→指標→施策→体制と予算」の順で組み立てると納得を得やすくなります。施策から話し始めると好き嫌いの議論になりがちです。売上や採用、品質といった経営の言葉で目的を説明することも効果的です。
経営層自身が当事者になる設計にする
社内向けの取り組みは、経営層が自ら語らないと本気度が伝わりにくいものです。四半期ごとのメッセージ発信や現場との対話会への参加など、経営層が担う役割を合意の段階で具体的に決めておくと、担当部署だけの取り組みになりにくくなります。

経営層との合意というと、承認をもらうことに意識が向きがちですが、私は「一緒に目的を作った」という感覚を持ってもらえるかが大事だと感じています。最初のたたき台を担当者が作り、経営層の言葉で直してもらうくらいの進め方がちょうどよいのではないかと思います。
インナーブランディングの目的からKPIと施策に落とし込む方法
社員の状態を「認知・理解・共感・行動」の段階に分け、段階ごとに指標と施策を置くと、目的をKPIへ落とし込めます。
目的と指標の方向性が合意できたら、実行計画に落とし込みます。理念や方針は、知る(認知)、意味が分かる(理解)、納得し自分ごとにする(共感)、日々の仕事で実践する(行動)という段階を経て浸透すると捉えると、いま何を測り何をすべきかが見えやすくなります。
| 段階 | 社員の状態 | KPIの例 | 施策の例 |
|---|---|---|---|
| 認知 | 目的や理念、方針の存在を知っている | 認知度、社内コンテンツの到達率 | トップメッセージ、社内報、説明会 |
| 理解 | 内容と背景、自分の仕事との関係を説明できる | 内容を説明できる割合、理解度テストや設問の結果 | 部門ごとの勉強会、事例の紹介、Q&Aの公開 |
| 共感 | 内容に納得し、自分の言葉で語れる | 納得度・共感度の設問、対話会での発言内容 | 対話会、ワークショップ、自分の仕事との接点を考える場 |
| 行動 | 日々の判断や行動に反映されている | 行動事例の共有件数、上司評価、結果指標の変化 | 好事例の共有・表彰、評価や会議運営への組み込み |
KPIツリーで目的と指標をつなぐ
目的文の「経営上の成果」を一番上に置き、その下に「目指す社員の状態」、さらにその下に段階ごとのKPIを並べると、KPIツリーができます。たとえば③の部門間連携が目的なら、最上位に「商談化までの取りこぼしの減少」、その下に「3部門が共通の顧客像で動ける状態」、さらに「顧客像の認知度」「部門合同の会議の実施頻度」などを置く形です。
最初の3か月は「測る仕組み」をつくる
立ち上げの段階では、成果よりも現状値を測り、定期的に測れる仕組みを整えることを優先するのがおすすめです。サーベイの設問、集計の担当、報告の頻度を決めておけば、その後の施策の効果を比較できます。

認知や理解の段階は施策を打てば比較的動きやすい一方で、共感や行動の段階はなかなか数字に表れないと感じています。そこで焦って施策を増やすより、現場の具体的な行動の変化を一つずつ拾って共有していくほうが、結果的に浸透が進むことが多いように思います。
インナーブランディングの目的設定でよくある失敗と対策
目的設定の失敗は、抽象的な目的、手段との混同、合意不足、測定不足から生じることが多く、事前に防げます。
最後に、目的設定の段階で起こりやすい失敗と、その対策をまとめます。企画書を作る前のチェックリストとして使ってみてください。
| よくある失敗 | 起こりやすい状況 | 対策 |
|---|---|---|
| 目的が抽象的すぎる | 「理念浸透」「エンゲージメント向上」のような一般論のまま進める | 対象・目指す状態・経営上の成果・期間を入れた目的文にする |
| 手段が目的になる | MVV策定やイベント開催そのものがゴールになる | 「それができたら社員はどうなるか」を2回問い直す |
| 目的を詰め込みすぎる | 経営層や各部門の要望をすべて目的に入れる | 主目的は1つ、副目的は1つまでにし、やらないことを明記する |
| 経営層と合意していない | 担当部署だけで目的を決めて走り出す | 経営課題とのつながり、指標、期間、経営層の役割まで合意する |
| 現状値を測っていない | 施策を始めてから効果測定を考える | 施策の前に先行指標の現状値を測る |
| 現場の言葉になっていない | 経営の言葉や専門用語のまま現場に伝える | 部門ごとに「自分の仕事では何を意味するか」に翻訳する場をつくる |
| 短期で成果を求めすぎる | 数か月で離職率や業績の改善を期待する | 先行指標と結果指標を分け、時間軸ごとの期待値を合意する |
こうした失敗が重なると、インナーブランディングが「意味がない」と受け止められてしまうことがあります。効果を出すための前提条件については、インナーブランディングは「意味ない」のか?でも整理しています。

失敗の多くは、担当の方の力不足というより、最初に目的をそろえる時間を取れなかったことから生まれていると感じています。少し遠回りに見えても、目的の言葉を関係者で何度か往復させる時間は、取り組みを続けるための投資だと考えてよいと思います。
インナーブランディングの目的設定から相談したい方へ
TSRコンサルティングでは、社内だけでは客観視しにくい組織課題をインナーブランディングの観点から診断し、原因の特定と仮説設定を支援しています。そのうえでプランニングから実行オペレーションまで助言し、自社で推進できるようになるまで伴走します。一枚岩の組織づくり、社員へのマーケティング思考の醸成、部門間のコミュニケーションの課題解決などのご相談に対応しており、料金は月5万円(税抜)からです。「目的がまだ固まっていない」という段階からのご相談も承ります。
まとめ
- インナーブランディングの目的は一般論ではなく、自社の経営課題から逆算し、目指す社員の「状態」として決める
- 6つの類型から主目的を1つ選び、目的別の対応表を使って先行指標・結果指標と施策をそろえる
- 目的文は「誰が・どんな状態に・何のために・いつまでに」の4要素で書き、やらないことも明記する
- 経営層とは目的文だけでなく、指標、期間、経営層の役割、見直しの基準まで合意し、認知・理解・共感・行動の段階でKPIと施策に落とし込む
よくある質問
インナーブランディングの目的は1つに絞るべきですか?
主目的は1つに絞ることをおすすめします。複数の目的を同時に掲げると、指標と施策が散らばり、成果の説明が難しくなるためです。どうしても必要な場合は副目的を1つ加える程度にとどめ、それ以外は次のフェーズで扱うと整理しやすくなります。
目的とKPIの違いは何ですか?
目的は「社員がどんな状態になり、経営上の何につながるか」という目指す姿を示すものです。KPIはその目的に近づいているかを確かめるための指標です。目的が決まらないままKPIを設定すると、測りやすいだけの指標が並んでしまうため、必ず目的を先に決めます。
目的を決める前にMVVを作り直すべきですか?
必ずしもそうではありません。既存のMVVがあり、内容が経営方針と合っているなら、まずは浸透させることを目的にするのが自然です。合併や事業転換などで前提が変わり、MVVが実態と合わなくなっている場合は、見直し自体を目的の一部に含めることを検討します。
中小企業でも目的設定やKPI設計は必要ですか?
規模に関係なく必要だと考えます。むしろ人数が少ない会社ほど、限られた時間と予算を何に使うかを決めるために目的が重要になります。指標は大がかりなサーベイでなくても、少人数への定期的なヒアリングや簡単なアンケートから始めることができます。
目的を決めても成果が出ない場合はどうすればよいですか?
まず、先行指標と結果指標のどちらが動いていないのかを確認します。先行指標が動いていなければ施策の届き方を、先行指標は動いているのに結果指標が動かなければ目的と指標のつながりを見直します。目的そのものが経営課題とずれていないかも、半年から1年ごとに確認しましょう。
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