- 施策別に公開されている費用の目安と、その読み方
- 同じ施策でも金額に差が出る理由
- 外注費だけでなく社内工数も含めた費用の内訳
- 予算の立て方と、見積もりで確認したいこと
- 費用を抑える方法と、経営層への説明の仕方
インナーブランディングに取り組みたいが、どのくらいの予算を見ておけばよいのかわからない。支援会社に問い合わせる前に、大まかな費用感を知っておきたい。稟議を通すために、金額の根拠を説明しなければならない。費用について調べている方は、こうした状況にあるのではないでしょうか。
インナーブランディングの費用は、「いくら」と一言では答えにくいものです。社内報の作り方を見直すだけで済む会社もあれば、理念の再構築から制度の見直し、制作物までを数年かけて進める会社もあります。公開されている目安を見ても、同じ施策なのに金額に大きな開きがあることに気づくはずです。
金額の差には理由があります。どこまでを依頼するのか、対象は何人か、制作物はどのくらいかといった条件が違うためです。費用を考えるときは、金額の相場を探すより先に、自社の目的と依頼の範囲を整理する方が、結果として判断がしやすくなります。
この記事では、インナーブランディングの予算を検討している人事・広報・経営企画の方に向けて、施策別に公開されている目安、金額が変わる要因、社内工数を含めた内訳、予算の立て方、費用の抑え方、経営層への説明の仕方を解説します。
インナーブランディングの費用は何で決まるのか
費用は依頼の範囲、対象の人数や拠点、期間、制作物の量によって決まるため、条件をそろえないと比較できません。
インナーブランディングの費用は、主に次の要因で変わります。
| 要因 | 金額が上がりやすい例 | 金額を抑えやすい例 |
|---|---|---|
| 依頼の範囲 | 調査から制度、制作物まで一括で依頼 | 助言や一部の工程だけを依頼 |
| 対象の人数・拠点 | 全社、複数の拠点、海外拠点を含む | 特定の部署から試す |
| 期間と頻度 | 数年にわたる継続支援、頻繁な訪問 | 月1回の定例、オンライン中心 |
| 制作物 | 冊子、動画、ポスターなどを新規に制作 | 既存の資料を活用する |
| 担当者の体制 | 多人数のチーム、専門家の常駐 | 少人数の担当者 |
目的が決まらないと費用も決まらない
理念の浸透が課題なのか、部門間の連携が課題なのかによって、必要な施策は変わります。目的が決まらないまま見積もりを取ると、提案ごとに内容が異なり、金額を比べることができません。目的の整理についてはインナーブランディングの目的の決め方:類型・KPI対応表と経営合意の進め方で解説しています。

費用のご相談をいただくときも、金額の前に「何に困っているのか」を伺うことが大切だと考えています。課題によっては、大きな施策を行わなくても、今ある社内の会議や発信の見直しで済むこともあるからです。
施策別の費用の目安
公開情報では調査で数十万円から、総合支援は年間数百万円以上の例もありますが、条件で大きく変わるため参考値です。
ここでは、公開されている2つの情報を紹介します。いずれも各社・各サイトが示している目安で、業界の標準価格ではありません。
比較サイトで示されている目安
BtoBサービス比較サイトのslide libでは、施策別の費用相場として次の金額が示されています。
| 施策 | 費用の目安 |
|---|---|
| 現状調査・従業員サーベイ | 30万〜150万円 |
| 理念・MVV/パーパス策定 | 50万〜300万円 |
| ブランドブック・クレドカード制作 | 30万〜150万円 |
| インナーブランディング動画制作 | 50万〜500万円 |
| 社内報(紙・1号あたり) | 30万〜100万円 |
| Web/アプリ社内報ツール | 月額3万〜20万円 |
| 浸透ワークショップ・研修(1回) | 20万〜200万円 |
| 総合コンサルティング(年間) | 100万〜1,000万円以上 |
支援会社が示している目安
支援会社のむすび株式会社は、自社の例として次の目安を示しています。会社の規模や施策の内容によって変動するとされています。
| 施策 | 費用の目安 | 条件 |
|---|---|---|
| 理念の再構築 | 月あたり約50万〜100万円 | 期間は約半年。戦略や社内浸透、社外発信まで一貫性を持たせる作業を含む |
| 社内の理念浸透 | 月40万〜70万円ほど | 座談会と定量調査を含む |
| 制度設計 | 約200万〜300万円 | 報酬・教育・等級・評価の4制度 |
| 制作物 | 印刷費を除き500万〜800万円 | ブランドブック、ポスター、クレドカードなど。規模や要望、ページ数で大きく変動 |
2つの表の読み方
たとえば、ブランドブックなどの制作物は、1つ目の表では30万〜150万円、2つ目の表では500万〜800万円となっています。これは、どちらかが間違っているというより、対象の制作物の種類や数、含まれる工程が異なるためと考えられます。金額を比べるときは、何が含まれているかを確認することが大切です。
なお、これらの金額は記事の作成時点で確認した各サイトの記載で、税込・税抜の別が明示されていないものもあります。実際の金額は各社に確認してください。

公開されている相場は大まかな目安として見ていただくのがよいと思います。自社の場合にいくらかかるのかは、範囲を決めて複数の会社に聞いてみるのが一番確かです。そのときも、金額だけでなく中身を比べることが大切だと感じています。
外注費だけではない費用の内訳
費用の全体像は、外注費、ツール費、制作費、社内工数の4つで捉えると、見落としを防ぎやすくなります。
予算を考えるときは、外部に支払う金額だけに目が向きがちです。実際には、社内の担当者や参加する社員の時間も費用です。
| 区分 | 主な内容 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 外部への委託費 | 調査、コンサルティング、研修、ワークショップの進行 | 追加の訪問や修正が含まれているか |
| ツール費 | 社内SNS、社内報ツール、サーベイツール | 初期費用、人数の増加、契約期間 |
| 制作費 | 冊子、動画、ポスター、グッズ | 印刷費、配送費、更新の費用 |
| 社内工数 | 事務局の作業、会議、研修の参加時間 | 通常業務を止める分の負担 |
社内工数を見積もる
社内工数は、「関わる人数 × 時間 × 人件費の単価」で大まかに見積もることができます。全社員が研修に参加する場合など、外注費より社内の時間の方が大きな負担になることもあります。逆に、外部に任せる範囲を広げれば、担当者の作業は減らせます。金額だけを見て内製か外注かを判断せず、両方を比べるのがよいでしょう。
ツール費は継続的にかかる
社内SNSやサーベイツールは、月額の利用料が継続的に発生します。導入の際には、最低利用期間や利用人数に応じた料金も確認しましょう。TUNAGを検討している場合はTUNAGの料金プランを徹底解説!費用対効果や導入企業の相場感を事例と共に紹介も参考にしてください。

担当者の時間は見積書に載らないので、後から「こんなに大変だとは思わなかった」となりがちです。計画の段階で、事務局に誰がどのくらい関わるのかを確認しておくと、無理のない計画になると思います。
予算の立て方
予算は目的から必要な施策を逆算し、最初の1年を段階に分けて、見直しのタイミングも含めて考えます。
予算の立て方には、施策から積み上げる方法と、上限から考える方法があります。実務では両方を行き来しながら決めることが多いでしょう。
| 手順 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 目的を決める | 解決したい経営課題を明確にする | めざす状態を一文で書く |
| 2. 現状を確かめる | 既存の調査や社内の声を確認する | 既にある資料と場を洗い出す |
| 3. 施策を選ぶ | 目的に合う施策を絞る | 全部を一度に行わない |
| 4. 内製と外注を分ける | 社内でできる範囲を決める | 社内工数も見積もる |
| 5. 段階に分ける | 試行と本格展開に分けて配分する | 試行後に見直す前提にする |
| 6. 効果の確かめ方を決める | 指標と測定の費用を含める | 始める前の状態を測っておく |
最初の1年は段階で考える
いきなり全社で大規模に始めるのではなく、最初は調査と一部の部署での試行に予算を配分し、結果を見て本格展開の予算を判断する方法があります。経営層にとっても、一度に大きな金額を判断するより説明を受け入れやすくなります。全体の流れはインナーブランディングの進め方ロードマップ:企画、設計、実行、評価の7ステップが参考になります。
単発の費用と継続の費用を分ける
理念の策定や冊子の制作は単発の費用ですが、社内報の運営やツール利用は継続的な費用です。単年度の予算だけで考えると、2年目以降に続けられなくなることがあります。複数年で見たときの負担も確かめておきましょう。

最初の予算は、大きな施策を一つ入れるより、小さく試して次の判断材料を得るために使うのがよいと感じています。試した結果があると、次の年の予算の説明もしやすくなります。
見積もりで確認したいこと
見積もりは総額だけでなく、含まれる業務、成果物、修正の回数、支援の終わり方をそろえて比較します。
支援会社から見積もりを取るときは、次の項目を確認すると、比較しやすくなります。
| 確認項目 | 聞いておきたいこと |
|---|---|
| 業務の範囲 | 調査、企画、制作、進行のどこまで含まれるか |
| 成果物 | 納品されるものと、著作権や編集データの扱い |
| 体制 | 誰が担当し、どのくらいの頻度で関わるのか |
| 追加の費用 | 修正の回数の上限、交通費、印刷費、ツール費 |
| 契約の形 | 月額の伴走か、プロジェクト単位か、最低契約期間はあるか |
| 効果の確認 | 調査や振り返りは含まれるか |
| 支援の終わり方 | 社内で続けられるようにする支援があるか |
依頼先のタイプごとの違いや契約形態の整理はインナーブランディング会社の選び方|支援会社のタイプ比較と費用の考え方で紹介しています。
安さだけで選ばない
金額が安くても、社内の作業が増えるのであれば、全体の負担は小さくならないかもしれません。逆に金額が高くても、自社に必要のない制作物が含まれていることもあります。見積もりの項目ごとに、目的とのつながりを確認しましょう。

見積もりの比較表をつくるとき、「その作業はなぜ必要ですか」と率直に聞いてみてもよいと思います。理由を丁寧に説明してくれるかどうかも、依頼先を選ぶ材料の一つになるのではないでしょうか。
費用を抑える方法と抑えない方がよいところ
既存の場や資料を生かすと費用を抑えられますが、経営層の関わりや現状の把握を削ると効果が出にくくなります。
費用を抑えやすい方法
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 既存の場を活用する | 朝礼、全社会議、1on1で理念に触れる | 忙しい場で形だけにならないよう工夫する |
| 制作物を絞る | 冊子を作らず、データや社内サイトで共有する | 現場で見られる媒体かを確認する |
| 内製できる範囲を増やす | 簡単な社内報や動画を社内で作る | 担当者の負担を見積もる |
| 対象を絞って試す | 一部の部署で先に行う | 全社展開の計画も考えておく |
| 調査を簡素にする | 短いアンケートと少人数の対話で把握する | 続けて比較できる設問にする |
むすび株式会社の記事でも、制作物を作らない選択をすれば全体の費用を抑えられるとされています。一方で、費用を抑えれば浸透のスピードが遅くなることにも触れられています。何を優先するのかを決めておくことが大切です。
抑えない方がよいところ
費用を減らすときも、次のものは削らないように検討しましょう。
- 経営層が語り、対話に参加する時間
- 施策を始める前の現状の把握
- 現場の管理職への説明と支援
- 効果を確かめて改善する時間
助成金や補助金について
研修や人材育成の費用については、公的な助成金の対象になる場合もありますが、対象や要件は制度や時期によって異なります。利用を検討する場合は、最新の公募要領を確認し、社会保険労務士などの専門家や窓口に相談してください。
少人数の会社の場合の進め方は中小企業のインナーブランディング:少人数・限られた予算で始める進め方と施策でも紹介しています。

予算が少ないから取り組めないということはないと思います。むしろ、経営者が自分の言葉で語る時間にはお金がかかりません。費用をかける場所より、誰が時間を使うのかが問われるテーマだと感じています。
経営層に費用を説明するときのポイント
経営課題と結びつけて説明し、段階的な投資にして、確認する指標と判断のタイミングを最初に示します。
「社員の意識を高めるため」という説明だけでは、金額の妥当性を判断してもらいにくくなります。次の要素を整理しましょう。
| 説明する要素 | 内容の例 |
|---|---|
| 経営課題 | 部門間の連携不足、定着率、新しい戦略の浸透の遅れなど |
| やらない場合の影響 | 現在起きている問題がどう続くか |
| 施策と費用 | 目的と結びつけた施策、外注費と社内工数 |
| 段階と判断の時期 | 試行の期間と、継続を判断するタイミング |
| 確認する指標 | 認知、理解、共感、行動、成果の段階ごとの指標 |
効果を約束しすぎない
インナーブランディングの成果は、業績や離職率の変化として表れるまでに時間がかかり、他の要因の影響も受けます。金額の効果を断定するのではなく、「まず何を確かめて、次に何を判断するのか」を説明する方が信頼を得やすいでしょう。関連する社内の数字を並べて、課題の大きさを示す方法もあります。

経営層の方は、費用の大きさだけでなく「いつ止める判断ができるのか」も気にされていることが多いように思います。判断のタイミングを最初に示しておくと、話が進みやすくなるのではないでしょうか。
予算の考え方から相談したい方へ
TSRコンサルティングのインナーブランディング支援は、月5万円(税抜)からです。組織課題の診断から、計画立案、実行までの助言・伴走、社内に入っての課題抽出まで、必要な範囲に合わせて対応します。「どの施策にどのくらいの予算をかければよいのか判断できない」という段階でもお気軽にご相談ください。
まとめ
- 費用は依頼の範囲、対象の人数、期間、制作物の量で決まるため、公開されている目安は参考値として読む
- 全体像は委託費、ツール費、制作費に社内工数を加えて捉え、単発と継続の費用を分けて考える
- 予算は目的から逆算し、最初は試行に配分して、結果を見ながら本格展開を判断する
- 費用を抑えるときも、経営層の関わり、現状の把握、現場への説明、効果の確認は残す
よくある質問
インナーブランディングの費用相場はいくらですか?
一律の相場を示すのは難しいです。公開情報では、調査で30万〜150万円、総合コンサルティングで年間100万〜1,000万円以上という例があります。依頼の範囲や規模で大きく変わるため、条件をそろえて見積もりを比べてください。
予算が少なくても始められますか?
始められます。経営層の発信や既存の会議、短いアンケート、少人数の対話など、費用を抑えて取り組める施策もあります。ただし、担当者や参加者の時間は必要なので、社内工数は確保しておきましょう。
内製と外注はどちらがよいですか?
目的と社内の体制によって異なります。発信や対話は内製しやすい一方、調査の設計や第三者視点での課題の整理は外部の力が役立つことがあります。方針は社内で決め、不足する部分を外部に頼む分担が基本です。
コンサルティング会社に頼むといくらかかりますか?
契約の形や関わる範囲によって大きく変わります。当社の場合は月5万円(税抜)からです。他社の金額は各社に確認してください。比べるときは、月額の金額だけでなく、訪問の頻度や作業の範囲も確認するとよいでしょう。
費用対効果はどう考えればよいですか?
売上だけで判断するのは難しいため、認知や理解、共感、行動の変化と、定着率や部門間の連携などの指標を組み合わせて確かめます。最初に指標と判断のタイミングを決めておくと、継続するかどうかを判断しやすくなります。
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